夏蝶の舞

□幸せな今に口付けを
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最近、梵天に会えない日が続いている今日この頃。


一日に一回は顔と声を聞かないと居られないというのに、そんな思い人は仕事で留守。


梵天の仕事は外科医だ。
彼はかなりの腕前で有名な医者である。
そのため、学会やらいろいろ引っ張りだこであるのだ。


「今日も遅くまで仕事なんでしょうね…」


そういう銀朱も医者である。
梵天と違って外科でなく小児科と内科である。
そのため、二人ばらばらな動きが多いのであった。


「電話しても”忙しい””後で”ですしね…」


電話したいけど、彼の彼自身の医者としての幸せを邪魔するわけにはいかない。
それをお互い分かっている。


「今日はもう寝たほうがいいですよね?
 明日には帰ってきますか、梵天?」


暗い夜空に梵天への文句を言って、ベッドに入る。









”?、ここは病院の霊安室?”


目の前には横たわってまったく動かない誰か。
何となく、その顔にかかっている布をめくる。
そこにいたのは、梵天だった。


銀朱はそれを見た途端、その場に崩れた。
「な、どうして…?」


近くにいたのは知り合いの医者の鳩羽だった。
銀朱の肩に手をおいて謝った。
”助けられなかった”と。


「どうして、梵天が?」


「信号を待っているときに、車に突っ込まれた。
 坂上、その身体の布めくるなよ。」


「……………。」


その場に崩れた銀朱にもう一度謝ってから、鳩羽はその場を離れた。


気づけば家にいた。
でも、心にぽっかり空いた穴はどうにもならない。
梵天の残り香のする部屋に入ったとき、梵天の愛用しているマグカップを手にしたときには涙がとまらなかった。


「梵天―――。」
あなたはいつだって、すぐに居なくなりそうで。
でも、こんなことあっていいと思っているのですか?
来週の日曜日の約束は?


二度と会えないなんて!!!!!!!



大きな風穴を胸に、仕事場のいすに座る。
患者にも心配されている。


早めに家に帰ると、また泣く。
梵天がいないとこんなになってしまう自分。


「貴方へのプレゼントが台無しです。」
涙をまた一筋零した。









朝六時、銀朱は目を覚ました。
隣には梵天の温もりは一切無い。


その無常さにまた泣く。
しかし、ありえないことが起きた。


梵天がフラフラになって銀朱のとなりに倒れてきたのだ。


「梵天?!」


「ああ、銀朱。帰ったよ。」


「あなたは死んだはず!」


「何言ってるの?
 俺は死んでなんかないよ。
 頭までおかしくなった?」


「え?
 死んでない?」


「死んでないよ。
 それより俺は眠いから寝る。
 起こしたらどうなるか、わかるね?」


そう言って、梵天は深い眠りに落ちていった。


死んでなかった!
…夢、だったのですね。


嬉しさから梵天の好きな料理をつくる。
梵天は和食好きですからね〜


梵天が起きたら言おう。
”貴方が好きです、ずっと傍にいてください”


赤くなる梵天を想像して笑う。


私は、梵天のいない世界には一秒だっていられない。
だから、離れないでください。
いつまでも―――――



+*+*+*+*+

銀朱の夢が発端の話でした。
この話は私が今朝みた夢から銀梵に改めました。
仮に二人を逆にしても同じような話なんでしょうね〜♪


では、また次の話でお会いしましょう。



11’9’11

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