春蝶の舞

□あらざらむ この世のほかの 思ひ出に
1ページ/1ページ



「ひとつは南、ひとつは北、ひとつは東、ひとつは西。」


私は帝天と接触することを呑んだ。
一つは真朱が神社から離れて安全だから。
もう一つはあなたも離れているから。


「中心に御座すのは尊堂。」


私は帝天と接触して消されるかもしれない。
こんな無謀なことできるわけがない。
でも、するなんてきっと役目から開放されたいからだろう。


「御尊顔する無礼をお許しください。」


融合できたとしても、私は死ぬつもり。
あなたはまた泣くのでしょうか?


「おや、面白い。
 夢に見た通りのお姿だ。」


このまま死ぬとしても、
思い出としてもう一度あなたにお会いしたいです、梵天?


「はじめまして、帝天?」


あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな


逢えたとしたらこう言うのでしょうね。
”簡単に君一人楽にしてやらないよ。”


空から槍がふる。
地面に私を縫い付けるそれを一本持って言う。


「約束があるんです。
 ”緩やかな荒廃を待つより、前に進もう”って。」


死ぬであろう間際でも、思うはあなた一人。


「貴方が私に与えて下さった力、御身でお試し下さいませ。」


昔のような温もりはなくても、後姿でもいい。
あの世への思い出にあなたをこの目に、胸に焼き付けたい。


「見知った先より…
 私は何も知らぬ未来を望む!!」


どっと胸に感じる衝撃。
ああ、開放される。


すみません、先に逝きます。
蝶になって神社に縛られずにあなたの傍にいます。


どうか泣かないでください。
梵天?





+*+*+*+

銀朱の一人語り。
台詞は本編より引用させていただきました。
ここを読んでいると、百人一首のこの歌を思いますね。
私個人の当てはめですが、お楽しみいただけたら嬉しいです。


11’8’6

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ