薄桜鬼

□行かないで
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「斎藤さんは、寂しくないんですか…?」

「……」

御陵衛士として、新選組を離れる斎藤さん。

私は、彼にここを離れて欲しくなかった。

彼が自分で決めたこと。

私には、彼を引き留める権利なんてない。

私には、彼を引き留めることなんてできない。

それは分かってたけど。

斎藤さんが伊東さんたちと新選組を離れると聞いて。

……気づいたら、地面を蹴っていた。

やっと彼を見つけて。

最初に聞いたのは。

――馬鹿みたい。

斎藤さんにとって私は、なんでもないのに。

将来を誓ったわけでもないのに。

私が、斎藤さんのことを好きなだけなのに。

だから、彼が眉間に皺寄せ振り絞った声に、耳を疑った。

「……寂しくない、わけではない……」

「え……?」

「お前と離れることになるのは辛い……」

「斎藤さん……」

綺麗な顔を歪ませ言う彼に、まさかと思う。

そんなはずないと分かっていても。

――彼も、私のことが好きなんじゃないかって。

「斎藤さん……」

「なんだ」

「私、あなたのことが好きです」

言ってしまった。

「……」

黙り込んでしまった彼に、気まずい空気が流れる。

――その時。

視界が暗くなった。

私をふわりと包んだのは。

信じられない気持ちで、私は彼を見上げた。

「……どうやら俺も、あんたに惚れていたようだ」

見つめる私から目をそらし、少し赤くなる斎藤さん。

「その……俺と一緒に来てくれないか?」

頬を染め言う彼に、私は迷いなく答える。

「はい。いつまでも、どこまでも――」

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