薄桜鬼
□掠めて行ったのは
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「千鶴ちゃん」
「……?」
いつもとは違う甘い声に、首をかしげる。
「沖田さん?」
「千鶴ちゃん、こっちへおいで」
「はい……」
甘く優しく手招きされ、私は戸惑いながらも彼に近づく。
「ねぇ、君はさ、僕の気持ちを知ってるのかな?」
「え……?」
「僕だけを見ててよ」
「沖田……さん……?」
急に言われても、何を言わんとしているのか全く分からない。
わけわからないままに、引き寄せられる。
「あのね、君を愛してるって言ってるの」
「え……」
「もしかして、気づいてなかったのかな? 僕はずっと君のことが好きだったんだけどな」
沖田さんが私のことを……好き?
「好きだよ、千鶴ちゃん。愛してる」
「沖田さん……/// わ、私も沖田さんのことが好きです」
思わず、言ってしまった。
ずっと必死に隠していた思いを。
「本当……?」
「ほ、本当ですっ」
顔を近づけられ、ドキドキする。
「……っ!」
唇を掠めて行ったのが何なのか、すぐには分からなかった。