RESET 〜明日照婆娑羅伝〜
□序ノ幕「終焉の呼び声」
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ゆっくりと沈み落ちていく。
血の巡りが止まり、あらゆる温度の感覚が切り離され、皮膚が冷めていく。
手足が重みを増し、息が途絶えていく。
神経が、末梢から壊死していく。
世界はすでに暗転していた。
掴める物も、踏み締められる物もそこにはなく、ゆらゆらと沈んでいく。
その曖昧な降下の感触は、むしろ心地よくさえあった。
ああ、消えていく。
命の灯が、じりじりと消えていく。
ひたひたと終わりの足音が、すぐそこまで聞こえる。
こわくなどない。
くやしくなどない。
…………ただ、さみしい。
なかないで。
だいじょうぶ。
ずっと、そばにいるよ。
あいにいこう、みんなに。
いっしょに、いこう。
優しい声が聞こえた。
何かが触れた気がした。
温かいものが、流れ込んできた。
世界が、真っ白に輝いた。
さいごの時
(平原綾香「Reset」)