□ギアスのお話
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L.L.さんが文化祭に行くお話し
「ナナリーとロロはなにやるの?」

 場所は生徒会室。今は文化祭間際で生徒会も大忙しだ。しかし一番忙しいであろう生徒会長・ミレイは優雅にティータイムをすごしている。

「わたしとロロのクラス合同でお芝居をするんです!」
「僕たち主役なんですよ!」

 仲のいい双子は声をそろえて答えた。



「なに?主役?それは見に行かなくては!!」
「だめだよ、L.L.。1日でも君がいなくなったら、シャルルが情緒不安定になる」

 ところ変わってここは饗団本部。地下の隠し部屋にてL.L.とV.V.がティータイムをすごしていた。
 ナナリーとロロの主役の話を聞き駆けつけようとしているL.L.をV.V.は引き止める。

「むぅ、親離れはさみしいと離れなかったことが裏目に出るとは・・・っ。だがしかし!私はいく!」
「はあ、そうなるよね。まあいいや。いっておいでよ。シャルルは僕が何とかする」
「すまないなV.V.!ナナリーとロロの様子はしっかり撮ってくるからな!!」

 L.L.はいつにないすばやさで支度をすませチャーター機に乗り込む。V.V.はあわただしく過ぎていく事態をみながら、どうシャルルを慰めるかを考えていた。



 当日。

『ではナナリー様から開会宣言をお願いします』
『はい・・・、にゃぁ〜』

 ナナリーのかわいらしい声により、AF学園の文化祭は幕をあけた。

「どうぞー気楽に入ってってくださーい!」

 校門の前でも呼び込みをしてより盛り上げようとしている。

「ふむ。さて、ナナリーとロロの芝居はいつだ?」
「ナナリー様とロロ様主演の舞台は、1時からになってます!」
「おおっ、すまないな!教えてくれてありがとう!」

 生徒からパンフレットをもらい舞台の時間を把握したL.L.は、それまでの時間つぶしに適当にまわることにした。
 ここAF学園はブリタニア、EU、中華連邦からも入学してくる生徒がいるマンモス校である。その広大な敷地にコレでもかと屋台が並ぶ。なぜ屋台なのかというとここが日本だからである。ミレイ曰く「郷に入っては郷に従え!」。そういうわけで日本の祭りのようなスタイルをとっているのだ。

「しまったな、財布を忘れた・・・」あまりに急いでいて、祭りに必須な財布を忘れた。

 そのことに気づいたL.L.はしかし慌てることなく屋台を見回していく。
 彼女の算段はその辺のチャラい男でも引っ掛けておごらせようということだった。伊達に長生きをしていない。

「まあ適当に引っかかるまでは歩いているとするか」



「ん?」
「どうした?スザク」

 それまで巨大ピザの材料を準備していたスザクはふと手をとめた。それに同じく準備していたジノが気づき、スザクに声をかける。

「・・・あいつ・・・、ごめんジノあとまかせた」
「え?!おいっスザク!どうしたんだ?!」
「ちょっと用事ができた!最優先事項だから、行かなきゃ!」

 ジノがとめるもむなしく、スザクは颯爽と走っていってしまった。



 ところ変わってロロとナナリーは。

「それはL姉さまにも教えたほうがよかったんじゃないかしら?」

 ユフィのクラス「カフェひのもと」に来ていた。
 ここは日本の古きよき喫茶店をモチーフとしている。時代設定は大正時代あたりらしく、ウェイトレスとして出ている女子生徒はみなはいからさんスタイルで接客している。ユフィも例に漏れなくハイカラさんスタイルだ。
 話はロロとナナリーの主演舞台をL.L.にも教えるべきだったのではという話だ。

「でも教えても姉さんはこられないですよ」

 抹茶セーキをストローで混ぜながらロロがいう。

「L姉さまなら飛んで駆けつけてこられそうだけど・・・」
「だめです。L姉さまはお忙しい方ですから、わがままは言えません」

 双子は断固として教えなくてよかったのだという。しかしユフィは、たとえ教えていなくてもかの人ならばどこからか情報を聞きつけて飛んできそうだと思った。

「でもせっかくふたりが主役なのに・・・」
「良いんですよ、ユフィ姉さん」
「L姉さまにはあとで撮影したものを見せるんですから」
「姉さんに見せるんだから失敗はできないね、ナナリー!」
「そうね、ロロ!お姉さまにほめてもらえるようにがんばりましょう!」

 舞台へのおもいを硬くした双子に、ユフィは応援の言葉をかけた。



 その頃L.L.は。

「L.L.!」
「あら、スザク。どうしたの、息を切らして?」

 L.L.の元に走ってきたスザクはめずらしく息を切らしていた。

「どうしたのじゃ、ないっ。お前がいろいろ歩き回るから、どこにいるのか、特定できなかったんだ!」
「あら、せっかく学園祭に来たのよ?歩き回らないでどうするの?」

 しれっと答えるL.L.は可憐だったが、長年この少女と付き合ってきたスザクは流されない。

「お前っ俺がここにいることを知ってってやってるんだろう!」
「ええ。もちろん」

 輝くような笑顔でL.L.はいう。

「お前ほどふりまわして楽しい男はいないからなっ」

 その言葉にスザクは脱力した。

「もういい…はぁ」
「そうだわスザク。あなた財布は持っていて?」
「あ?ああ、持ってるけど」
「ならいいわ。私におごって頂戴」
「はあ?」
「奢ってくれないというならそれでもいいわ。でも、後悔するのはあなたよ?」

 上目づかいでスザクを見上げるL.L.。ここでスザクがおごらないといえば、先ほどの計画通り適当に男を引っ掛けるつもりであった。
 L.L.の言わんとすることを察したスザクは、泣く泣く財布を献上することにした。

「それでいいのよ」L.L.はひとり満足そうだった。



「あーあ。スザクのやつどこいったんだよ〜」

 ジノはぼやく。あれからスザクに押し付けられた仕事をなんとかこなし、やっと休憩が取れたところだ。あとは時間になったらガニメデに乗り込みピザをつくるだけとなった。

「疲れたー」
「ジノ、情けない」
「そんなこというなよ、アーニャ」

 ジノの傍らにたたずむアーニャは無表情でかえす。ジノはそんなアーニャにはなれたもので、視線を彼女からはずす。そして大きなため息をついた。

「なんか私って可哀想…」
「…記録。『可哀想なジノ』」少しばかり楽しそうな顔で写メるアーニャ。



「そういえば…」

 スザクは立ち止まった。ジノに押し付けてしまった仕事を思いだしたのだが、今のままでは戻れそうにない。

「まあ、いいか」
「スザクー。あのわたあめが食べたーい」

 こうして午前中は過ぎていった。もうじきナナリーとロロの演劇が始まる。
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