文
□粘着質な彼
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あれから臨也さんはしつこく訪ねてくるようになった。
以前からたびたび訪問されることも僕から出向くこともあったものの、やはり仕事が忙しいときは来られず数週間会わないこともあった。今は僕から会いに行かないにも拘らず2日と日を空けずに彼の顔を見ている。僕としては距離をとりたいから反応は淡白だ。それでも彼は懲りもせずに会いにくる。
「好きな子に会いにきて懲りるとか無いでしょ」
笑っていう彼はここ数週間で少しやせた、と言うかやつれたように見える。きっと忙しい合間を縫って、睡眠時間も食事の時間も惜しんできているのだろう。これは自惚れじゃない。そのくらいされるくらいに愛されていると自覚している。だからこそ別れてほしいのに。それを拒みきれないのは僕の甘えだ。
「……無理しないでくださいよ」
「帝人ちゃんが別れるっていうのをやめてくれたらね」
何か言えばこれだ。僕の言うことなんか聞いちゃくれない。ポツリとそうもらせば。
「俺は俺の持てるものすべてで持って君を引き止める。見苦しいと思われるくらいのことはしてみせるよ」
そう言いながら僕に膝枕を強要する。最近は拒むことすらさせてくれない。
「僕の気持ちも無視するんですね」
そう言うと彼は僕の顔をまっすぐ見て答えた。
知らないよ君の気持ちなんて。何しろ俺は最低男らしいから
そんな最低男を好きになってしまった僕もまた、最低なんだろう。