文
□妖精と恋
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むかしむかし。それは少し昔のことです。ある時、ある人間が、ある願いを星にかけました。するとどうでしょう。翌日、彼の元には
妖精があらわれたのです。彼女はいいます。
「私がその願いを叶えましょう。ほかでもないあなたのためです」
そう笑っていうのです。彼は妖精と契約を結びました。
それから妖精は人間のために、人間の願いのためによく働きました。しかしなかなか願いを叶えるまでに至りません。
しびれを切らした人間は妖精に言い放ちました。
「お前はもういらない」
その言葉に妖精は悲しそうな顔をして言います。
「ごめんなさい。準備は整いました。これからあなたの願いを叶えます」
妖精は人間に魔法をかけました。彼が想う人と結ばれるよう、心をつなげる魔法を。
翌日、彼の願いは叶いました。ただしその傍らに妖精の姿はありませんでした。人間と契約を果たした妖精は彼に知られぬうちに故郷
へ帰ったのです。
それから数日。人間のもとにまた別の妖精があらわれました。それは以前、契約を結んだ妖精の友達だと言います。妖精はひと組のペ
アリングを差し出します。
「これは彼女が作ったものよ。彼女の最後の魔法。あなたとあなたが想う人とつければ、生涯結ばれるわ」
そう言って差し出した妖精は、涙を流していました。彼女はどうしたのかと訪ねます。すると妖精はさらに泣いて言いました。
「彼女は、死んだわ。彼女の体は、限界だった。それでも、あなたの役に立ちたかったのよ」
人間は驚きました。どうしてそこまで自分を想ってくれるのか、人間は考えました。
「受け取って。彼女の最後の想い」
人間はそのペアリングを受け取ります。その指輪には、今の自分たちにはない大きな愛情を感じました。
妖精は人間に恋をしていたのです。
人間はその指輪を家宝にして、生涯寄り添うこととなった伴侶と大事にすると決めました。
その指輪は、今でもその人間の家に受け継がれ続けています。