□貴方からのキスなんていらないもん
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「ねー、なんで?」

 うるさいな。

「なんででも」
「理由くらい教えてよ」

 絶対いや。

「自分で考えなよ。いーくん素敵で無敵な情報屋さんでしょう?」

 それなら分かるはずじゃないか。大体僕のことを僕よりも知ってると普段あれだけ豪語しているじゃない。

「…分からないから聞いてるんじゃない」
「そんなの知らない。僕は教えません」
「みーちゃーん…」

 なんて情けない声を出すのか。まったくもう。

「いーくんのばーか」
「ばかで良いよ。いいから、みーちゃん教えてよ。なんでキスしちゃだめなの?」

 キスしたいよー。なんて。一体どの口がほざくのやら。

「じゃあ他の女の子としてくればいいじゃない。みんな喜んでしてくれるよ」

 ぷいっとそっぽをむいてやる。後ろからなんか不機嫌ですよオーラっぽいものが出てるけど無視。
 とか思ってたら無理やり向かされた。あ、なんか予想以上に怒ってる。

「それ、本気で言ってるならここで犯すけど?」

 なにそれ理不尽。怒ってるのは僕の方なのに。

「…だってほんとのことじゃない。べつにいーくんは僕とじゃなくたっていいんでしょ」
「なにそれ」

 なんでちょっと嬉しそうな顔してるんだ、こいつ。

「なにその顔」
「え、だってみーちゃんそういうことでしょ?それは…」

 なに照れてんだ、このイケメン。あーもう腹立つ。でも無駄に顔が良いから叩くこともできないじゃないか。

  ちゅ。

「していいなんて言ってないんだけどなんでわざわざ立てなくて良い音立てるのなんで嬉しそうな顔してるの」
「はは、ノンブレスお疲れ」
「ホント腹立つ…」

 とかいって肩に頭を乗せちゃう僕もばかだ。そんなに安くて簡単な女の子になっちゃだめだ、僕。

「いいのいいの、みーちゃんは可愛いだけだから、それでいいの」
「うるさいばか」
「かーわいい、みーちゃん。もう他の女にはしないから大丈夫。だからもっとキスさせて?」

 ばーか。いーくんのばーか、…僕のばーか


(僕以外の人とする貴方からのキスなんて、いらないもん。)

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