文
□おなじ話
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今何してるの?話をしようよ
いつものように彼女に電話する。3コール内には出ること。言いつけてあるから忠実な彼女は守って2コール目には出る。
『もしもし?どうしたの?』
心配そうな彼女の声。思わず笑う。笑いながら尋ねる。
「今何してるの?」
『何もしてないよ』
いつものように、普通に彼女は答える。少し安心した。
「今どこにいるの?」
『窓のそば』
「じゃあおいでよ、こっちに」
『今すぐ行くからちょっと待ってて』
彼女はどこの窓のそばにいるのだろう。すぐそこの窓だろうか。電話の向こうはとても静かで、音は聞こえない。
「話をしようよ」
『じゃあまずあなたから』
「いつもそうだね」
『そうですね。でもそれでいいじゃない』
「いまどこ?」
『今、あなたのそば』
「何見てる?」
『あなたのことを』
「ははっ。ストーカーみたいだね」
『あなたに言われたくないです』
「あはははっ、それもそうか。・・・ねえ、どこ行くの?」
『どこにも行かないよ』
「嘘つき」
『嘘じゃないよ。・・・ずっとそばにいる』
ほら、話をするんでしょ?と彼女が言う。そうだねと俺は答える。
『で、今どこ?』