Bleach:惑わされる真実

□過去
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約数百年前、瀞霊廷では現在の隊長、副隊長が兼任される前で、ルキアや恋次がまだ護廷十三隊に入隊していない時だった。

その頃の現世では虚の出現も少なく、比較的平和な生活を送れている時期だった。

しかし、その平和はある一つの事件によって崩されていった。

隊首会。顔をしかめた元柳斎は、その重い口を開いた。


「護廷十三隊全隊に告ぐ。反逆者、柳結城を全力で探し出し、処刑せよ」


柳結城――― 月島サラの母は元零番隊に所属し、護廷十三隊とは独立した存在として、極秘の仕事を行っていた。

彼女は気立てもよく、美しく、心優しい女性で他の隊員も一目置いていた。

なぜそのような事件に繋がったかというと、ある一体の虚が原因となっていた。


「アルディエル・・・・」


漆黒の艶めいた髪を一つにまとめ、透明感のある濃紫の瞳をしかめてその相手を見る女性。柳 結城。その目の先には人間の様な姿をした仮面を被った少年がいた。


「あなたは、なぜ隊員を何十人も殺したの?いいなさい」


「・・・・・分からないんだ・・・。気がついたら目の前に血を流した死神達が倒れていた・・・」


アルディエルと呼ばれた人物は元々は虚。元々低級の虚よりも強大な力を持っていた彼はいわば今のエスパーダのような能力を身に付けていた。しかし、彼は戦いを嫌い、平和な生活を願っていた。弱々しくまだあどけなさが残るその少年は結城を見つめ、目からは涙をポロポロと流している。


「あなたは元々は虚。あなたの中に、もしかしたら血を求める本能があるのかもしれない。しかしそれには何らかのきっかけがあるはずよ。覚えていることは何でもいいの、私に話してくれる?」


アルディエルは訳も分からず虚圏から尸魂界に放り出された。それをたまたま見つけた結城はその少年を殺すことが出来なかったのだ。そして彼女はアルディエルを誰にも見つからないように結界を張り、一人で世話をしていた。


「僕が・・・ここに一人で居る間、死神の格好をした男が現れたんだ。
そしたら意識が途切れて、気がついたらそこにいた。」


「その男の顔、覚えてる?」


「ううん・・・・。」


アルディエルは言葉を止めると、鼻を鳴らしてすすり泣く。結城は母のように優しく抱擁すると、秘密を探るために瀞霊廷に向かい、情報を集めだした。


そして辿り着いた真実はーーーー藍染惣介の黒い陰謀
結城はその事実を伝えるため、四十六室に掛け合った。しかし、アルディエルの事を隠していた結城は全てを話すことが出来なかった。

そして、その事を不審に思った四十六室は結城を徹底的に調べろと、言い渡した。そして、結城は瀞霊廷から追われる身となったのだ。


「クッ・・・なぜ、私のいう事が分からないの?!」


結城は取り囲まれ、身動きが取れなくなってしまった。しかし、彼女が斬魄刀を抜くことはない。自分が刀を振れば、死傷者が出てしまうのを避けられなかったからだ。あくまでも敵意はない、と言う事を示したかったのだ。目の前には8人の隊員、そして朽木白哉―――。


「黙れ。法を冒す者の言う事を聞く気はない」


白哉は刀を構えると、結城に向けて千本桜を放つ。結城はもはやここまでかと目を瞑り自分の死を受け入れた。


「結城さんっ!!!」


目の前に立ちはだかったのはアルディエルだった。アルディエルの深緑の髪が日の光に反射してキラキラ光る。


「貴様・・・誰だ・・・・」


「やめてアルディエル!!!」


結城は必死に乞う。それをみた白哉は二人が知り合いだと言う事、そして彼がここにいてはいけない存在であることを察知した。


「成程、結城・・・ここで自分の罪を死を以って償ってもらう」


戦闘に慣れていないアルディエルを白哉は無視するように瞬歩で避けると、結城に向けて刀を振り下ろす。結城は白哉よりも数段上の強大な力を持ってるのにもかかわらず、素直に白哉の攻撃を受け入れた。


「?!」


あまりの敵意のなさに白哉は驚きを隠せなかった。結城は鮮血を流しながらその場に倒れる。


「・・・・っ、結城・・・なぜ戦わなかった・・・」


「・・・私はっ・・・あなたを息子の様に思っていましたっ・・・ハァ・・・強くなりました・・ねっ・・」


アルディエルはその状況を頭で理解できず、呆然と立ち尽くしている。


「これだけは忘れないで・・・真実を・・・見失わないでっ・・・白哉・・・」


「っ・・・死神ぃぃぃぃ!!!!!!」


突然叫びながら白哉の背後に回り、攻撃を食らわしたのはアルディエルだった。彼の顔は悲しみに沈み、涙ももはやでない状況だ。あまりの衝撃にその場から吹き飛ばされた白哉。それを構いもせず、アルディエルは結城の体を抱き起こすと、その場から突然姿を消した。


白哉はやるせない気持ちと、最期に残した結城の言葉を思い返しながら、隊舎へ帰っていくのだった。
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