a

□仁王
1ページ/1ページ




「分からんようになった」

仁王雅治が昨日、私に告げた言葉だ。そしてそのあとは、「お前さんのことが」と続く。
何が分からなくなったのか、何で分からなくなったのか、そんなの私に分かるわけない。
呆然としながら暫く仁王くんの顔を見つめたあと、私は口を開いた。

「じゃあ、何が知りたい」

そう言った私に、仁王くんはへんな顔をした。
困ったような、呆れたような悲しそうな表情の仁王くんを、私は困った顔で見つめる。

「やっぱ分からん」

別れを告げられるまで猶予はそう無いなと思った。
仁王くんが私に告白してくれてから3年がたった秋の事だった。






.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ