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□仁王
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「分からんようになった」
仁王雅治が昨日、私に告げた言葉だ。そしてそのあとは、「お前さんのことが」と続く。
何が分からなくなったのか、何で分からなくなったのか、そんなの私に分かるわけない。
呆然としながら暫く仁王くんの顔を見つめたあと、私は口を開いた。
「じゃあ、何が知りたい」
そう言った私に、仁王くんはへんな顔をした。
困ったような、呆れたような悲しそうな表情の仁王くんを、私は困った顔で見つめる。
「やっぱ分からん」
別れを告げられるまで猶予はそう無いなと思った。
仁王くんが私に告白してくれてから3年がたった秋の事だった。
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