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「監督。お会いしたいという中学生が来ています。」
「……フム?」

雲水がグラウンドに戻った頃には、既に練習が始まっていた。仙洞田監督はすぐにこちらに気づく。サボりだと思われただろうか。
用件を告げると、監督は暫く目を瞑り、思案の声を漏らす。雲水はじっとそれを見つめていた。何も考えないことだけに集中しながら。

「お主はどう見た、雲水?」
「小柄な男です。しかし、脚が完成されているように見えました。見る価値は、あるかと……。」
「よかろう。呼んでみるかの」

雲水は目の前の鋭い目をした老人が、ちらとこちらを見たのが分かった。

「呼んでまいります」

グラウンドの横を通って階段のほうへ歩くと、先輩たちの視線を感じた。その中に阿含はいない。1軍の練習だからではなく、"出る必要が無い"からいないのだ。考えて何になる。

「ついてこい」

雲水が階段前についたとき、少年は片手でアメフトボールを弄んでいた。さっきは気づかなかったが、私物のボールのようだ。
声を掛けると、少年は嬉しそうに顔を輝かせて笑った。まるで女のような笑い方をするやつだな、と雲水は思った。




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