雪月繚乱 第ニ幕《BL》
□最終抄
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「せつや。ジュースが飲みたい」
「あつき、”お兄ちゃん”だろ? お前は俺の弟なんだから」
「……せつや」
「――わかった。いいよ。ほら、ジュース」
あつきという名の男の子は、せつやという自分より大きな男の子から、ジュースの入ったマグカップを貰い、おいしそうにそれを飲んだ。
「うまいか? あつき」
あつきは首だけを動かして、うんと返事をした。
二人のいる部屋は、入口のドアも窓枠も壁も真っ白で、辺りには清潔な匂いが漂っている。
同じく白いパイプベッドが一つだけ。傍の壁からは、ナースコールのスイッチがぶら下がっていた。
「母さんも父さんも、お前が生きててビックリしてたな。でも、俺は信じてたんだ。――お前はきっと、生きてるって」
「……せつや」
「ん? なんだ」
「ぎゅってして?」
「――うん。いいぞ」
せつやは、触れれば壊れてしまいそうな、小さな身体を抱きしめた。あつきはその温もりに安心して、そっと目を閉じる。
「あつき……もう、どこにも行ったらダメだからな。ずっと、俺の傍にいるんだぞ」
「……うん。どこにも行かない。ずっと、せつやといっしょにいる」
――絶対。何があっても。