雪月繚乱 第ニ幕《BL》
□三抄
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まだ小学生だった彼が、その責を負うにはあまりにも酷であった。
普段から責任感の強い性格であることも災いした。
そして彼が兄であったことも――。
「本当に……どうしてこんな惨いことになったのか……あんなに仲のいい兄弟だったのにねぇ」
親戚や近所の人間が、好き勝手に同情や憐れみを振り撒く。それは精神のバランスが調わない子供にとって、まるで責め苦だった。
同じ悲しみを背負う両親は、それでも彼を守ろうと努力した。
けれど――彼の受けた傷は、それさえも塞ぐことが適わなかったのだ。
遥かに長い時間、彼は白い部屋で心の治療を受けた。
――1年後。
救急患者が運び込まれ、院内はにわかに騒然となる。
「先生! Vfです!」
「心臓マッサージを!」
「はいっ!」
「死ぬなよ? 君はまだ若い。これからまだまだ生きなきゃ……」
「先生、心臓が……!」
――彼がいた病院のICUに、天使が舞い降りた。
ずっと面会謝絶だった病室で、眠りについていた幼い少年は、彼の守り切れなかった弟と同じ顔をしていた。
「生きてたんだな……あつき。ごめんな。兄ちゃん、今度はちゃんとお前のこと守るから――約束するから」