雪月繚乱 第ニ幕《BL》
□ニ抄
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代わり映えの無い極日常の風景。
毎朝。同じ時間。同じ電車に同じ制服。
それが当たり前であるかのように、規則正しく列を為す人の群。
・
誰ひとり、彼に見えている景色が、他とは違っていることに気づく者はいない。
・・
彼はそれを、孤独と呼んでいた。
変わることのない世界、癒えない傷を抱える刻が、永遠に続く気さえしていた。
その瞬間までは――。
運命の日、彼は一瞬にして目を奪われた。
いや、きっとそこにいた誰もがそうなったはずだ。
途中乗車の人ごみにまぎれて現れた、その人物の存在感は際立っていた。
その亜麻色の髪は少し長めで、柔らかそうな質感につい手を伸ばしそうになる。
同じ顔をした学生達がひしめく車内で、唯一違う目をした綺麗な容貌に、周りの視線はくぎづけだった。
しかし近寄り難い何かも同時に混在し、誰も話し掛けることすら出来ない。
・
彼もその中の一人に過ぎなかった。ただその時は、その胸に生々しく開いた傷が、全ての行動に歯止めをかけていた。
それから3年近く秘めてきたその感情は、成熟期にあって花開く直前、意外な形で成就されようとしていた。
「はじめまして、アッキー」
その時はじめて、二人の視線は交わることが叶ったのだ。