雪月繚乱 in fantasy

□神の侵攻
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「そなた、あのナーガの者を監視しているそうじゃな」

 謹慎を解かれ、帝の執務室に呼ばれた月夜は、苦々しげな表情を十六夜に向けた。

「申し訳ありません。勝手なマネを……」

「責めているのではない。実は余も考えておったのじゃ。前帝の意向とはいえ、いつまでもあの者の処遇を決めずにいるのもどうかと……しかし仮にもナーガの要人、ヘタに余からは手が出せぬでな。有り体に云えば、そなたが先走ってくれて助かった」

 十六夜は無邪気に笑い声をたてた。
 それで思い出したが、彼は昔から月夜には都合よくたちまわるところがあった。
 今ならそれが、彼なりの親愛の証であったとわかる。

「十六夜は、本当にボクに甘い……」

「なにか云ったか?」

 月夜は静かに首を横に振った。

「近々処遇をくだす。この国を出れば、なにを企んだとしてももう手出しはできまい」

「じゃあ、イシャナは……」

 十六夜がうなずいて椅子から立ち上がった。

「疑わしきは罰せず…というところじゃ。そなたが思うところあれば、それまでの処遇はまかせる」

 月夜の肩に軽く触れ、十六夜は顔布の向こうで目を細めた。

――処遇、というか訊いておきたいことはある……けど。

 夕刻を迎え、業務を終えた月夜は部屋に戻ると、書物の山からナーガの寄贈書を持ち出した。
 それには、気になっていた節がある。
 イシャナでなければ、おそらく他のナーガの人間に逢う機会など、そうないであろう。

「あいつに訊かねばならないというのも癪ではあるが、この際仕方ない」

 夕げのあとに、イシャナのいる迎賓の館へ向かうことにした月夜は、ふと何かの気配に顔をあげた。
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