雪月繚乱 in fantasy
□【運命】fate
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扇暦1012季
萌樹の節
その宵
天空から見降ろせば、まるで菱形に切り取られたような遥か大陸の、南方に位置する世辞にも大きいとは云えない小国ガルナ。
ガルナは、大陸では中小国でありながら、他のどの大国よりも強力な軍事力を持って、治安を維持していた。
別名、神の寝所と呼ばれるガルナの玉座には、その名にふさわしく、神々しいまでに麗しい帝(みかど)がついていた。
ぶっちゃけ、近隣国の愚か者どもが、帝狙いで国を手中にしようと、血迷った行為に走るほど。
だがしかし。
先に述べた通り、ガルナは大陸最強の軍事力によって、それらすべてをあっさり退けてきた。
しかして他国の誰もが、ガルナの王は神の恩寵を受けている――と信じて疑わない。
それはそうと、この話の主役は帝ではなく、その側使(そくし)であり幼なじみの月夜(つきよ)という少年である。
この月夜、産まれてまもなく捨てられた孤児という身の上であった。
それが帝の側使だった養父に拾われ、同じ年頃の第二皇子とは顔が似ていることを理由に、皇子の傍で育てられることとなった。
そもそも、宵に浮かぶ月のように輝く黄色い髪と、冬の兎の如く白い肌に赤い瞳を持つ、浮世離れした容貌が、帝の興味を引いたという。
そのことから、彼は月夜と名付けられたのだ。
月夜は物心ついてすぐに月読(つきよみ)博士となるべく教育を受け、拾われて17季の後、史上最年少で帝の側使となるのである。
その少し前に、当時の帝は崩御。
王位継承を放棄した第一皇子に代わり、第二皇子が玉座についていた。
それが現帝、十六夜(いざよい)である。