雪月繚乱 第三幕《BL》
□生まれ変わるとき
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安月から離れようとした彼の服を、反射的に掴んでしまう。
そんな自分に戸惑って、すぐに手を引っ込めた。雪夜が振り返る。
「なんだ…」
何と云えばいいのか迷いながら、俯いて小さく呟いた。
「雪夜は……ボクを、恨んでるんだ…よね?」
どう受け止めればいいのかわからなくなった安月の肩に、暖かい手が置かれる。
「…そう、思うか?」
「…だって――」
長い間傷つけてきた自分を赦す理由が、雪夜にあるのだろうか。
顔をあげたすぐそこに、婀娜(あだ)めく唇があった。
近すぎて仄かに息がかかる。
どうしようもなく胸がときめいた。自分は、待っているのだろうか? 雪夜の…キスを…。
唇が、触れそうで触れない距離をさ迷う。
鼓動は悪戯に騒ぎ立て、雪夜の唇から目が離せない…。
「そう、思いたければ……構わない。そのかわり…」
――そう、思いたければ? それって。
「…ふ…んっ」
雪夜の右手が華奢な腰にまわり、期待する唇を塞がれた安月の胸がいっぱいになる。
今朝はあんなに恐れていた彼を、今は拒むどころか触れることを許してる。