雪月繚乱 第三幕《BL》
□生まれ変わるとき
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食事を済ませると、雪夜はまた安月を抱き上げようとしてきた。
「じ、自分で行ける…よ」
何故か急に羞恥心を取り戻してそれを阻んだ。
階段を壁づたいにゆっくりと昇る後ろから、雪夜もついてくる。ただ、何も言わずに。
――どうして? 雪夜。
一歩一歩進むうちに、安月はどんどん胸が苦しくなっていた。
――恨んで、憎んできたはずのボクを、今もそうして気遣ってくれるのは…どうしてなんだ?
かと思えば、夕べは恐ろしい目にあわされた。まるで雪夜が二人いるみたいだ、と安月は思った。
――違う。それだとつじつまがあわない。
・・・・
安月はやっとそのことに気づいた。
雪夜が真実安月を恨んでいたのなら、何故今なのか?
もう、何年も前から安月は同じことを繰り返していたのに、彼は変わらなかったのだ。
ずっと――雪夜は優しかった。
「あっ…」
ふらついた安月を、雪夜が後ろで受け止めた。荷物でも担ぐように抱えられ、彼の部屋に連れていかれて再びベッドに降ろされる。
「早めに戻ってくる。それまで漏らすな」
「な…子供じゃないんだけど!」
柳眉をあげる安月に、雪夜が笑っている。――胸がまた、キュンと苦しくなった。