雪月繚乱 第三幕《BL》

□生まれ変わるとき
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「安月…」


「触るな!」


 つい強く雪夜を拒絶した。夕べのショックがまだ尾を引いている。


 それでも雪夜は、少し寂しげに笑むと、安月の身体を軽々と抱き上げベッドの上に降ろした。


「痛…っ…も…やだ…」


 また痛い思いをさせられると思っただけで、涙声がまじる。そんな想いとは逆に、雪夜の大きな手が優しく、亜麻色の髪を撫でた。


 自分の隣に腰掛けて、横たわる身体を労るように布団をかけられる。振り向くと、ペットボトルに入った水を差し出された。


 そういえば喉がカラカラに渇いていた。けれど痛みと抵抗がそれを受け取るのを躊躇わせた。


 その様子をどう思ったのか、雪夜はペットボトルを開けて自分の口に含んだ。


 いきなり安月の顎を掴んだかと思うと、含んだ水を口移しで流し込まれる。驚いて素直にその水を飲み込んでしまった。からっぽの胃に水分が浸透すると、じわじわと空腹感が沸いてくる。


「腹がへるだろ…朝メシはここに置いていく。俺は仕事に行くが昼には戻る、それまでジッとしていろよ」


 そう云って軽く唇を啄まれる。甘い痺れと共に雪夜は部屋から出ていった。


「ジッとしてなくたって…動けないんだよ!」


 安月の野次がドアを振動させた。


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