雪月繚乱 第三幕《BL》

□生まれ変わるとき
3ページ/36ページ


「……あ……」


 気を失う前に、雪夜に何をされかたを思い出し、ベッドに突っ伏した顔を青くした。


 そもそもの発端は何であれ、無理矢理犯された事実は衝撃が強すぎた。腰に痛みが走るたび、軽い殺意が胸にのぼる。


 しばらく身体を横たえていると、ふと昨日は縛られていた両腕が自由になっているのに気づく。


 シャツがクッションになっていたのか、跡は残っていない。見れば洗い立ての大きなシャツを身につけていた。


 汗だくで気持ち悪かった肌は洗い流され、清潔な香りが鼻腔を掠めた。


「…いつの間に」


 どこかひんやりとした感覚に、布団の中の二本の足をちぢこませる。途端に痛んだ足に緊張が走る。


「痛い……」


 情けないような、悔しいような気分がして、目尻に涙が滲んだ。


 と、足音が聴こえる。この部屋の主が戻ってくる。


 安月は思わずベッドで腰を引いた。それは目測を誤り、上半身を支える間もなく床に落下した。


「すごい音がしたな…平気か?」


 上から雪夜が覗いた。安月は腰と背中を打ち、ピクリとも動けない。


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ