雪月繚乱 第三幕《BL》
□生まれ変わるとき
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「安月……すまん」
不意に覚醒した意識の片隅で、唸るような雪夜の声を聴いた。
――雪夜、何を謝ってるんだ?
瞼を震わせて、身体を動かそうとしたが、まるで鉛にでもなったように少しも動かせない。
朧げにその原因が蘇る。
――そうだ、雪夜にボクは…。
ひどく疲れているらしく、すぐにまた意識が混濁した。
頬を優しく撫でられるのをくすぐったく感じながら、安月は深い眠りに落ちていった――。
次に目が覚めた時、安月は咄嗟に違和感を感じた。
いつも差し込む朝陽の場所が違う。薄く開いた視界に、ハッキリと部屋の様子が映し出されると、そこが自分の部屋ではないとわかる。
大きな本棚に分厚い専門書や雑誌が並び、製図用の重いデスクが脇にある。雪夜らしく、簡素だが寛容な部分も感じさせるレイアウトだ。
安月は重い頭を巡らせ、自分以外に誰もいないことを確かめると、上半身を起こそうとして身体を強張らせた。
「痛い…何? 筋肉痛…?」
腕や足、上肢のおかしな部分に鋭い痛みを感じて、うまく力が入らない。それと、臀部に微妙だが違和感がある。