小説

□暗い純粋
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今日は天気が気持ちよい月曜日だった。
温度も高くてぽかぽかしており、日向ぼっこなんて言うのもできそうなくらい。
一護はそんな事を思いながら彼女が居るあの場所に向かっていた。
『…ちょっと、通いすぎかな…』
あれから毎日欠かさずその場所に行っている自分が信じられない。
任務の前は寝ないと絶対駄目だったのにあの少女と居ると
エネルギーがすべて全回復したような感じになる俺は相当のろけているのだろうな。
一護は赤い顔をその大きな手で覆い隠す

「何をしているのだ?」
「うぉわあああ!!!!!」
ズサーッと盛大にずっこけた一護を見て彼女はけらけらと笑った。
「てめ、ルキア…なんでここに」
一護は自分のダサさに呆れた恥ずかしい。
「今日は少し寝坊してな、今来たのだ。」
まだ少し眠たいのかルキアは目をごしごし擦る。
てか今2時なんだけど、どんだけのんびり生活なんだコイツは。
「お嬢様〜っ!!!」
途端後ろから近付いてくる慣れた声にルキアは振り向いた。
当の一護は?マークを浮かべている、お嬢様?
「どうしたのだ花太郎」
「日傘をお忘れです!!」
花太郎はそう言うと白いヒラヒラのついた日傘を開け、ルキアに日光が当たらないようにさした。
「日傘なんて何時も持って行っておらぬだろう、いらぬ」
「だめですお嬢様!昨日
日のあびすぎで肌がお荒れになっていたではありませんか!!
ただでさえ日の光に弱いお身体なのに…これ以上は花太郎が許しません!」
「いらぬと言ったらいらぬ!」
一護は言い合っているふたりを呆然とした目で見つめた、お嬢様…?
「おいルキア、お前ってもしかして…」
その問いに答えたのはルキアではなく花太郎だった。「花太郎まっ…「紹介遅れましたこちらのお嬢様は貴族・朽木家当主の朽木白哉様の妹君、
朽木ルキア様です、
そして私はルキア様のお世話係をさせてもらっております山田花太郎と申します!」
深く一礼する花太郎を一護はまだ信じられない気持ちで見詰めていた、
何故なら朽木家といえばこの国で知らない人は居ないと言うほどの大貴族だからだ。
確かに気品溢れた少女だとは思っていたが
まさか朽木家の娘だったとは。
だがこれで初めて会ったあの時
聞いた事のある名前だ、と思った事にも納得がいった。
「一護、すまなかった…言ったら、お前の態度が変わるんじゃないかって思えて…怖かったのだ。」
ルキアは小さな声でそう言うと口を紡いだ。
そんな事あるわけないのに、そんな事言い出したら俺の方が…
一護はその時の事が怖くて考えれば考える程目の前がグラグラして吐き気と悪寒が止まらない。
いくら心優しいこの少女でもきっと暗殺者にまでは優しくない、人の命を奪って生活している俺の事を軽蔑の目で見るだろう。
どんどん息が上がってとうとう一護は力無く
しゃがみこんでしまった。


「一護!」

名前を呼ばれた事に反応して
遠退いていた意識を取り戻した彼は反射的に上を向いた、
すると彼女の心配するような顔が視界に合った。
「どうしたのだ一護…いきなりしゃがみこんで…貧血か…?それとも…」
それとも、やはり私が嫌になったか?
彼女はそう言いたいのだろう。
「んな訳ねーだろ、貴族とか…そんなの関係ない、ルキアはルキアだろ
大丈夫…ちょっと立ち眩み起こしただけだ。」
一護はそう言いながら立ち上がると小さな頭をぽんっと叩いた。
すると心底安心したのか俺の胸に倒れ込んで、ぎゅうとしがみついた。
オイオイオイそりゃマズイって!!!
心臓がドキドキと煩い、この音がルキアに聞こえてるんじゃないかと思うと恥ずかしくて仕方なかった。
「良かった…一護に嫌われたかと思った。」
「ば、ばーか、そんな訳ねーだろ、」
「…なぜそんなに緊張しているのだ…?」
「なっ…何故ってそりゃお前が…だっ抱きつ、い、てくるからっ…」
顔面を真っ赤にしながら一護は言った
それの反応にルキアはきょとんとしてから
声を上げて笑いだした。
「なっ…何笑ってんだよ」「いや…はは、すまぬ、つい癖でやってしまった」
ルキアはそう言いながら体を離した。
つか癖ってなんだ癖って、どんな癖だよ。
「あの〜一護さん…でいいですか?」
「えっ?あ、はいっ」
いつの間にか完全に2人の世界に入り込んでいたようで花太郎の存在を忘れていた 一護はいきなり名前を呼ばれてびくっと肩を震わせた。
「ルキアお嬢様はこう見えてとてもお身体が弱いのでございます、
一護さんが良ければで良いのですが…お嬢様の隣で日傘を指してはもらえませんか?
どうやらお嬢様は僕にさされるのは嫌な様なので…」そう言って苦笑いの花太郎の発言をルキアは別に嫌な訳ではない!と必死で否定する。
一護は 差し出されている日傘を受けとると ルキアの手首を掴んだ。
「?…一護?」
「花太郎さん…だよな、ルキアの事は俺に任せろっ
ルキア、行くぞ」
「え、ええっ!?」
「ありがとうございます、ではお嬢様お気をつけて!」花太郎は深く礼をするともと来た道を戻って行った。
「よしっルキア行こうぜ!」
一護は日傘を広げると彼女が日に当たらないように気を使いながら歩き出した。
「行こうってどこにだ!」「遊びに、だよ!!」
「遊びに!!?」





街を歩こう。






君となら汚れたこの街だって、素敵に見えてしまう。

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