薔薇

□だって愛してるから
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「ゆうとが好き」
「え。うん、俺も好きだけど」
「知ってるけど、そーゆう事じゃないから。おれが言ってんのは、つきあってほしい、の好き」

 ……ハイ?

「ちょ、ちょちょ、何言ってんの? 蓮」
「だから、つきあってほしいって言ってんの」
「えーーと、落ち着こうか。見て分かる? 俺、男だよね?」
 事実を確認して貰おうと、優しく語りかけてみる。
 そうすると可愛い顔が不機嫌に歪み、眉間にしわが寄った。
「おれがまだ小さいからってバカにしてんだろ? そんなの分かったうえで言ってんだよ」
 あ、そうでしたか。
「ゆうと、好き」
 真剣な目で見つめられる。
 なんで今ドキッとしたの、俺。
「年の差とか、男どうしだとか、考えたよ。それでもおれはゆうとが好きだったんだよ」
 う、わ。やば……不覚にも、かっこいい、なんて。
「あ、う、れれれ蓮っ、俺っあの」
 で、でも、そうなんだ、蓮は。
「やっぱり、だめなのか? なあ、ゆうと。トシだって七才もちがうけど、でも、すぐに気にならなくなるよ、だから、なあ。ゆうと」

 まだ、小学生。

「う、うぅ……犯罪だよぉ、俺捕まっちゃうって、」
 涙目で訴えると、蓮が俺の手を取って、顔を覗き込む。それから、あやす様に優しい言葉。
「だいじょうぶ、ないしょにすれば。おれと、ゆうとのひみつ。おとなになるまでの、ひみつ」
「でも、そんなの絶対、」
「ばれないよ、だから、ゆうと。おれを愛して」
「れ、ん。俺、でも、どうしよう」
 駄目だ、俺のほうが年上なのに。今年高校生に上がったっていうのに。
 対処しきれない状況に、泣きそうになってる。
 そんな俺の表情を見て、蓮が悲しそうに口を開いた。
「ごめん、ゆうと、ゆうと。こまらせるようなこといって、ごめんけど、でも、やっぱり好きだから」
 蓮にこんな顔させて、何してるんだよ俺。こんなんじゃ、どっちが年上なんだか分かりやしない。
 蓮が、俺の腕の中に入っちゃうくらい小さなこの子が、一生懸命伝えてくれた言葉。
 なんで俺はなにも、言えないのだろう。
「……っ、蓮、俺どうしたらいいの? 蓮、蓮っ」
「ゆうと、ねえ、ゆうとはおれがきらい?」
「きら、嫌いじゃないよ。嫌いなはずがない」
「いいよ、いいよゆうと。それならもう、いいから。泣かないで、ゆうと」
「……っ、蓮」
 ごめんね、ごめんね。
 なんで俺はこんなに情けないんだろう。
 手を伸ばして、蓮の体をぎゅーって痛いくらいに抱きしめる。
「ゆ、うと?」
「蓮、ごめ、ごめん。こんな俺でごめん、好きだよ? 好きだけど、」
 ごめんね。
 俺はどうすれば良いのか分からないよ。



 俺は、君の愛に応えていいの?





2011/04/10

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