薔薇

□押し倒してみました
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 押し倒してみました。幼なじみを。……男の。
「……えっ、何ちょっと待って航、待って何、えっ?」
 俺の部屋のベッドの上、どうやら幼なじみの大輔は大変に混乱しているらしい。
 あ、ちなみに俺も勿論、男です。

 事の経緯をざっくり説明致しますと。
 一年付き合った彼女に振られた、と大輔が泣きついてきました。
 へえ、また振られたのと俺が慰めました。
 いっつもなんだよな、何が悪かったのか、と大輔が泣き言を言いました。
 お前鈍いからね、サッカーの事しか頭にねーじゃん、と俺が馬鹿にしました。
 嘘だ、俺鈍くない、と大輔が反論しました。
「鈍いよ」
 と、いうわけです。

「いやいやいやいや、何、意味わからないんだけど! 俺が鈍いのとこの状況なんか関係あんの? つか鈍くねーしっ」
「分からない時点で鈍い」
「は? な、に……」
「分からないなら黙ってろよ。これから襲うから」
「おそ……っ!? は、航? ちょっと何言って、」
 大混乱の頭でこの状況を必死に理解しようと努めているが、こいつの頭は運動神経に全ての能力を使ってしまったようで、すっからかんなのだ。多分理解できない。
 お前の可能性に賭けてる時間はこっちには無い。関係なしに、展開進めさせて頂きます。
「もうお前考えても分かんないだろうから、別に考えなくていーよ。黙って襲われてろ」
「や、航……っ、ふ、んっ」
 無理やり唇を奪う。
 大輔は、びく、と震えて、それから身を捩った。
「ん゛ーん゛ー」
 うーうー唸りながら、抵抗する大輔。
 つか、運動してるだけあって、かなり力が強い。結局、しばらくの抵抗の末、引きはがされてしまった。
「っはぁ、はぁ……」
 乱れた息。とろん、とした瞳。エロいよ、お前。
「おま、え……何してんだよ、っ」
 ぐったりとした表情のまま俺を睨みつける大輔の耳に、囁く。
「知ってんの? 俺がお前好きだったこと。知らなかっただろ? だから、鈍いっての」
 大輔の目が、驚きで見開かれる。
「冗談、だ、……ろ」
「冗談で男にキス出来ると思いますかー?」
「は……、だって、おま、え。彼女とか、ふつーに、」
「そりゃあね、彼女のひとりやふたり居ないとね、俺だってまだまだ盛んなお年頃ですもの」
 そうしないと、だって無理やりでも多分、お前の事襲っちゃってたよ?
「え? ……え?」
 動揺。超顔に出てる。
「間抜けな顔」
 馬鹿だから、まだ状況理解出来て無いんだろうなあ。
「でも可愛い、大輔」
 慈しむ目を向けると、いたたまれない、とでも言うように大輔は身じろいだ。
 それでも逃れられないように、俺はがっちりと腕を掴んで離さない。
「や、ちょっと、航……っ」
「もっかい、キスしていい?」
 耳元でささやく。
 その言葉が合図で、かぁぁあっとまるで音が聞こえそうな勢いで大輔は真っ赤になった。
「や、だ」
(あ、なにこれ、かわいい、さそってんの? なんなの、おまえ、)
「やっぱさぁ、諦められる気しねぇわ」
 お前がそういうシュミねーの、知ってっけど。だから、手を出さずに来たんだけど。

「ここまできたんなら、ねえ?」
 もうひと押し、してみよう。

 落ちてくれるかも、しれない。





2011/04/10

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