薔薇

□マジで嫁に来ませんか
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 今回は清楚系そろえたよー、っつーから期待して行ってみりゃ、結局は二人きりになった途端、ノリノリかよ。
 駄目だね、合コンに来るような女は。まあオレが言うのもなんだけどな。

「う〜、頭イテ……。ただいまー」
 酒で頭痛の酷いオレは、ぐったりしながら家の扉を開けた。扉が開くと共に、奥からパタパタと足音が聞こえてくる。
「うわ、もーまたそんな飲んできたの? しょうがないなぁ。朝ごはん作ってあるから、食べる? 重たいんだったら味噌汁だけにする?」
「……」
 こーゆーのを、清楚っていうんだよ。
「隆志?」
「ん、味噌汁だけ頂戴。雅樹」
 ――男だけどさ。

 じゃあ早く中入りな、とせかす雅樹の声に連れられ、一日ぶりに足を踏み入れた我が家。
 席に着くとすぐ、目の前に差し出された温かい味噌汁に、改めて有り難さをかみしめる。
「マジ助かるわー。お前とルームメートで良かった」
 遊んで帰っても、飯出来てるし。オレの体調考えて、色々考慮してくれるし。
「つーか、雅樹超優しいし」
「調子良いこと言うなよ」
 そう言うと、雅樹はため息をひとつ。
「イヤイヤ、もぉ本気でお嫁さん来てほしいくらいよ? 雅樹、オレの好みにドストライクっ、だし」
「はいはい。俺が女じゃなくて残念でしたね」
「もうっ、雅樹ちゃんたらつれない子」
「いいから早く味噌汁飲めよ。大学遅れるぞ?」
「いやオレ今日昼からだから大丈夫〜」
「とか言って、これから寝て起きれなくなるの目に見えてる」
 どうせ俺が起こすんでしょ? と雅樹は目を半眼にした。
「俺二限からだからね、ケータイでしか起こせないからね。出たあとまた寝るとかやめてよ?」
「だいじょぶ、大丈夫。さんきゅー雅樹」
 ホントに大丈夫かよ、と雅樹は不安げな顔。本当世話焼き。
 自分で言うのもなんだが、雅樹が困る訳じゃないのに熱心にオレの世話をよくしてるなあ、と思う。
「もう時間だし、俺行くけど、ほんとちゃんと大学来てよ?」
 雅樹はカバンを肩に引っさげながら、ずずっと味噌汁をすするオレに向かって言う。それから、ドアに手をかけた。
「大丈夫だってば。いってら〜」
 ひらひら手を振り、笑顔で送り出すオレを見て、もう一度眉根にしわをよせて不安げな顔を雅樹はしたが、時間が無いのだろう。「いってきます」と扉を開いた。

 もうホント、雅樹超お嫁さん。
 マジで嫁に来ませんか。
 オレの母親よりも美味い味噌汁を飲みながら、そんなことを実は結構本気で思ってるんだけど、きっとあいつはオレがそう思ってるだなんて露ほども考えてないはずだ。
 本気で伝えたら、すげえ困るんだろうなあ。

「んー、ま、もうちょいこのままかなぁ」





2012/06/10

たいぶ前に書いてたやつ。出てきたからあげてみる。
一方通行ぽいし、ラブ要素低めだなこれ。

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