薔薇
□俺のストーカーさん。
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俺はストーカーされている。
多分、ここ3ヶ月くらい。
(まさかこの俺にストーカーされる日がくるとは)
そんな良い顔持ってるわけでもない。性格もそこまでいいわけでもなし。
特技も趣味も、人に誇れそうなほどのものは持ってない。
だから驚いた。気持ち悪い、とかはまったく頭になくて、ただただ驚いた。
ストーカーするほど俺が好き? なにそれありえねえ、って。
だって告白さえされたことのないこの俺が。
俺は俺に自信が無かった。だから、ストーカーとか何かの間違いだと最初は思ってたんだ。
それと、もうひとつストーカーが信じられなかったワケ。それは――相手が男、ってこと。
俺にストーカー。しかも男。
「……無い無い」
そう思い続けて早3ヶ月。
いや、まあ3ヶ月もつけ続けられれば、信じるしかなくなるよね。
認めざるを得ません。
はい、俺にはストーカーがいます。
しかし俺のストーカーさん、ストーカーはストーカーでも、おとなしい部類らしい。俺が何か被害にあったわけではないからだ。
いや、つけられてるってのが被害っちゃ被害ではあるんだけど。話しかけられたこともなければ、手紙を送りつけられたわけでもない。それに、一度家の中を徹底的に調べたけど何もなかったから、どうやら盗聴器もしかけられてるわけではなさそうだし。
ただ、ふと気づいたら見られてる気がする。行く先行く先、よくそいつがいる。
そういう感じ。
俺が視線を感じてそいつの方を向いて、目が合う。そうしたら、ストーカーはいつも真っ赤になって、目を逸らした。
なんていうか、
(可愛いね?)
見続けられているうち、好かれてるんだと思い知らされるうち、どうやら俺の中で変化が起こっていたらしい。
いつの間にか、そいつが可愛くみえていた、とか。
(男に可愛いとか、俺頭沸いた?)
でも実際、悪い容姿では無いんだよね。
可愛らしい、って顔でもないんだけどさ。どっちかっつうとイケメン?
なんか『イケメン!』って感じでなく『イケメン?』って感じの顔。なんとなくイケメンかも、くらいの顔。
背は俺と変わらないかな、それくらい。
――ん、やっぱ可愛い要素ないよね?
(やっぱり俺の頭沸いてるだけかも)
「でもなぁ、」
なんか可愛いんだよ。
「というか、ちょっとからかいたくなるな、あの顔」
真っ赤になって目を逸らす、その顔が俺は結構好きだったりする。
しかもそのストーカーは、バレてないと多分思ってる。
あんなに見られてちゃ、バレるに決まってるじゃん。尾行もヘッタクソだし。なのに、あいつはバレてないと思ってんの。
なんだよそれ、可愛い。でしょ?
「ふ、俺が気づいてるって知ったらどんな顔するかなあ」
可愛い俺のストーカーさん。
いつ君に振り向いてあげようか。
全ては俺が握ってる。
2012/07/29