百合
□妄想盲目少女
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幼なじみの大切なあの子。
きらきら輝く誰より愛した女の子。
いつか結ばれると信じていたの。
あの子に彼氏が出来たときだって、「おめでとう」と言いながらいつか別れるに決まっていると、その日を笑顔で待っていたの。
きっと結ばれるべくは私だと、信じて信じて、信じて。疑ったことなんて無かった。
「いつも傍に居てくれる、貴女の大切さに、気づいたの。好きよ」って。
そんな妄想を繰り広げながら、あの子の彼氏を頭の中で見下して、ねえほらいつでも私は待ってるから、帰っておいで、と。
それなのに。
「あのね、結婚の約束をしたの」
可愛い可愛い私のあの子は、それはそれは幸せそうに。
笑って、左手の薬指にはめたわっかをきらきらした瞳で見てた。
「そう、おめでとう」
私はまた、あのはじめの彼氏が出来たときみたいに、別れてやっぱり私のもとに帰ってくるんだろうって。
なのに、おかしい。結婚だって。
薬指にまとわりつく銀色は、私とあの子の何かを壊した。
ゆび、を。
「どうしたの? 咲ちゃん」
掴んだ薬指は白くて細い。
そのわっかを外せば、結婚なんてなくなるかしら。
「きれい、ね。このゆびわ」
「でしょう?」
きらきら、輝く。
「ね、優希。しあわせ、なの」
「うん」
くすりゆび。
くすりゆび。
「咲ちゃんは、彼氏さんと上手くいってる?」
「うん、大丈夫」
頭の中をよぎった男は、もう何日も連絡なんて取っていない。
くすりゆび、くすりゆびがほしい。
「優希、結婚式いくよ」
「うん、咲ちゃんに一番きてほしい」
私はあんたが一番欲しかった。
あなたの愛が欲しかった。
薬指に、愛を記したかった。
いらない、いらない。世界なんかいらない。私とあなたが結ばれない世界はいらない。
貴女と結ばれることを夢見ていた、妄想盲目少女は今日、死にました。
2012/04/25