百合

□アイツだけは
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「5組の沙理奈ちゃんマジ可愛い」
「何よいきなり」
「まあ聞け、瞳。昨日私は天使を見つけたんだ」
 瞳が、抑えようとする気すらない程の怪訝な顔をした。
「あんた、この前まで7組の園田さんがどうのこうの言ってなかった?」
「確かに園田さんも美しかった。けど、あの人は自分で美人って知ってるからプライド高いの。それがちょっと」
「……」
「なんだよその目!」
「あんたねぇ」
 はぁーー、とわざとらしいため息を吐かれた。こいつ失礼。
「真央、あんた相変わらず理想ばっか高いのね。そんなんだから恋人できないのよ」
 我がご友人はどうやらオブラートにつつむ、という行為を知らないらしい。
「うっさいわね、顔イイ方が良いに決まってんじゃない。もちろん性格悪いなんて論外」
 そりゃあそうだけど。と呆れたまま瞳は呟く。
「確かにアンタも綺麗っちゃ綺麗な顔してるよ? ほんと顔だけは」
「なんだよ褒めるなよ照れるじゃないか」
「最後まで聞きなさい。顔は、って言ったのよ。顔だけはイイわよ」
「なんだ? それじゃまるで私の性格が、」
「悪いです」
 こいつっ……私が言い終わる前にそんなキッパリと。

 瞳はビシッと人差し指を私に向けると。
「そんな外見ばっかのあんたと付き合ってくれる子なんているわけないでしょ。性格イイ子は、同じく性格イイ子好きになるわよ」
 う、うぐ。返す言葉が無い。
 返す言葉がなくなり、ぎりぎり歯をくいしばっていた私に、続けて瞳は言う。
「つーかね、恋人欲しいなら“アイツ”いるじゃない」
 名前こそ出されなかったものの、アイツ、が誰かすぐに分かった。私の顔は分かりやすく歪む。
「真央、あんた好きになるのアイツくらいなんだから、もう折れちゃいなさいよ」
「アッ、アイツは嫌だ……!」
「なんでよー顔だって真央好みの可愛い系だし、性格も良いと思うけど」
「確かに!! 可愛いけど! 基本的には良い奴かもだけどっ!」
 そこでいったん大きく息を吸い込む。
 この後の言葉を、全力で伝えるために。
「アイツは壊滅的に変態なんだ……!!」
 この要素が、いかにマイナス方向に働くか。直接被害のない瞳には分からないんだろう。
「真央に言われたらおしまいかと」
「アイツは別格だよォ! 人の棄てたゴミすら拾い集めてコレクションする変態ストーカーだぞ!?」
 瞳が苦笑いしながら、私の肩をぽん、とたたく。
「まあ、愛されてると思えば、いいじゃん、ね?」
「嫌だよ!! 無理だよ!!」
 それでアドバイスしたつもりにでもなっているのか?



「真っ央っちゃああん」
「げぇっ、莉桜奈……!」
「あ、噂をすれば」
「真央ちゃん今日も可愛いねえ。ちょ、ちょっとだけ触ってもいいかなあ……?」
「ぎぃやあああっ」
「いやー、なんだかんだ真央も莉桜奈には甘いし……付き合っちゃえばいいのにねぇ」

「真央ちゃんちゅっちゅっ! 可愛いよう!」
「いーやーだぁー!! 離れろおおお!!」





2012/07/10

莉桜奈――読めますかね?りおな、です。
ほとんど真央と瞳の会話で莉桜奈ちょこっとしか出せなかったです……(笑

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