百合

□バレンタインデー・ジレンマ
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 甘ったるい。



 ――「はい、友チョコ!」
 ――「私も作ってきたの!」

 本日、バレンタインデー。
 世の中の乙女が意中の人に想いを送る日。
 もとい、最近となっては友チョコや逆チョコなんてもんまではびこっている、チョコレート会社の戦略が大成功をおさめている日だ。
 私の周りも例にもれず。
 女の子達は本命チョコを何時渡そうかとそわそわしたり、たくさんのチョコレートを用意してお友達と交換したり。目いっぱい今日という日を楽しんでいるようだ。

「……あぁ、教室が甘ったるい」
「なぁに浮かない顔してんのー?」
 ぼーっとしている私の背後から声。
 振り向かなくても、私に話しかけてくるやつなんて決まっているんだから、誰かなんてすぐわかる。
「そう見える?」
 振り向かずに言えば、私の肩に声の主の腕が回った。
「ええ、少なくともあのへんでチョコレート交換してるオンナノコから比べれば、まったく楽しくはなさそうよ?」
「だってねぇ、あんな純粋に楽しめないもの」
「もったいないねぇ。こういうのは楽しまなきゃ損よ?」
「そーいうアンタは楽しんでんの?」
 やっと振り向いてその顔を見れば、何が嬉しいのかニヤニヤとしている。ほんと、ムカつく顔してるわね。
「そらっもー楽しんでますよぉ。見てこれ」
 そうして私に見せてきたのは、紙袋いっぱいの甘いあまーいチョコレート。
 消費するのにいくらかかるんだってくらいの量をかかえたそいつは、女の子達に貰った大量のチョコレートをいやらしいニヤニヤした笑顔で見ている。
「可愛いオトメたちから頂いたチョコレートですよ。はぁもう、ホント女の子って可愛いねぇ」
 世の中の男は可哀そうだ。こいつが貰えているのに、大半の男どもがもらえるチョコレートの量は、きっとこれより少ない。
「あんたの楽しみ方は、世の中の乙女とはちょっと違う気がするけどね」
 ボソッと呟いた言葉に、返ってきたのがまた、ムカつく反応で。
「んー。今日と言う日を楽しめない子に言われたくないなぁ?」
 顔面に拳ブッこんでもいいだろうか。
「ふふ、可愛い子が私を思って準備してくれたかと思うと、たまんないわ」
 こんなのでも、まぎれも無く女だ。しかも、顔は良いときてる。有り得ないわ。
「……アンタは用意しないの」
「えー? 私から貰いたい子全員にあげてたら破産しちゃうでしょ? なんつって」
 ケラケラ笑う、可愛い顔が憎い。

 ああもう、バレンタインなんて無くなれば良いのに。
 それでも、誰かさんのチョコを僅かに期待して落ち込む矛盾を飲み込んで、溜め息をつく。





2013/02/14

バレンタインデー。
軟派な女の子とどっか冷めてる女の子。

(載せるの遅れた……)

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