薔薇

□ウソから出たマコト*02
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「悪い真、先輩と会ってくれ」

「は?」
 幼なじみの創から、またしてもお願いをされた。
 突然うちに乗り込んできて、言い放ったその言葉。前と言ってること違いませんか。

 とりあえず、話をしよう。
「お前、先輩と会うことはないだろうけど、って言わなかったっけ?」
「言いました」
「顔と名前貸してもらうくらいだ、って言ったよな?」
「言いました」
「じゃあ何故なのか」
「いやぁ……ちょっと、これには色々と経緯が……」
 目をそらしながら、創が苦笑いを浮かべる。
 とにかく、俺は理由を詳しく聞くことにした。
「真の写真見せてさ、お付き合いしてる人が居るんですみませんって言ったんだよ」
「おー、そしたら?」
「そしたら……会わないと納得出来ない、会わせろって」
 そこからどうにか断ろうとしたものの、どうやら先輩に言いくるめられたらしい。
 まあ創はアホだから、口でどうにかしようってのは無理に決まってるわな。
「ほう。それで押し負けて?」
「はい、そーです」
 すんません、と言いながら創は大袈裟に土下座のポーズをした。
 それからしばらくすると、チラッと顔をあげ床についていた両手を目の前でパンッと勢いよく合わせて奴は言ってきた。
「いやホント申し訳ない。けど、約束しちまったもんで……」
「会えと?」
「まぁ、ね。お願いしますよ!」
「まあ会うのは良いけどさぁ、それなりに設定練っとかないとボロ出るぞ?」
「そうだな、俺も思ってた!」
「……よし、やるか」
「ん?」



「それではこれより、作戦会議をはじめまーす」
「おぅいえーい」
 そんなわけで、ゲイの先輩とやらの前でボロが出ないよう、これから設定を練ることになりました。
 机にペンと紙を装備して、わきに水分補給の為のコーラ。完璧。
 伊達メガネを装着して、気分はどっかのお偉いさん。
「なんか雰囲気出るな!」
「さて、どんな設定にしますかな? 創くん」
 くいっとメガネを人差し指で押し上げる。
 喉が渇いていたのでコーラを飲みながら、創に視線を向けた。
「ちょっ、なんか楽しくなってきたぞ!」
「ばっか、真面目に考えろお前の処女かかってんだぞ」
「ケツを死守するための作戦会議か……重いな」
 はしゃいでいた創がいきなり、いやに真面目な顔を作ってそんなことを言うから、思いきりコーラを噴き出してしまった。
「おま……っ、きたねぇ!」
「てめーのせいだバカ!」
 ゴッホゴッホむせていると、創がゲラゲラ笑っていた。くそっ、この野郎。

「――気をとりなおしまして。今度は真面目に考えるぞ」
「おうー」
「とりあえず、付き合った経緯を決めよう」
「うむ」
「あんまり恋人の思い出とか聞かれても困るし、最近にしよーぜ」
「そうだなぁ、大学生になってこう……離れてお互いの大切さを知りました! みたいな!」
「それもっともらしいから、それにしよう。実際は家となりだからよく会うけどな」
 ペンを握って、設定をメモする。
 たまに軽口を挟みながら、俺達は設定を作りあげていった。

「付き合ったのは2ヶ月前、告白はお前から。お互い大学が離れてから意識するように……と、こんなとこか。他なんかある?」
「大体こんなもんだろ、あっなんかオソロイのもんつけとくとか?」
 おお、創にしては良い考えだ。頷いて肯定すると、続けて創が言った。
「俺同じような指輪ふたつ持ってるし、それ使おうぜ」
「よーし、じゃあ作戦会議終わり! あとは当日だな」
「いや迷惑かけますわ。よろしくお願いします!」
 手を顔の前に持ってきて、創が苦笑いをする。
 俺はそんな奴の頭をはたいて、ニヤッと笑ってみせた。
「ほんと手のかかる“恋人”だな?」





2013/07/01

一年くらい間があいたけど、続き。
展開遅いなあ(

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