わんぴーす

□ホンネとウソ
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「なぁ、サンジ。もしも、俺が女で、
お前が好きだっていったら、付き合う?」


ラウンジでウソップ工場を広げていたウソップがサンジの方を見ずに作業をしながら聞く。


「なんだそれ?」


サンジは軽やかな包丁の音をたてながら、言う。


「だから、もしもの話だって」


笑いながら言うウソップ。
「ふーん」と少し考えているように、言う。

とんとんとカチャカチャという音がしばらく続いたと思ったら、


「付き合う」


と小さい声でサンジが答える。
小さい声過ぎたのか、作業しているウソップの耳には届かず、
またしばらくとんとんとカチャカチャの音が流れた。

それに気づいたサンジは、軽く舌打ちをして、ウソップに声をかける。
それにも、ウソップはなかなか気づかず、


「ウソップ!!」


と声を張って言うと、ウソップが両肩をびくっとさせて、


「な、何だよ、突然」

「付き合うっつってんだろ」

「キレながら言うなよ。こえーよ」

「だって、答えてんのに反応しねーから」

「え?返事してたの?」

「した」

「わりぃ、集中してたわ」

「知ってる」


声がモロ不機嫌ですと言った感じだったため、
ウソップは少しびくつきながら、
もう一度答えを聞いた。


「だから、付き合うっつってんだろ!」


とさらに声を張る。
「こえー」と言いながら、サンジの答えを反芻する。
すると、やっと噛み砕けたのか、
「え?」と驚きの声と共に、
持っていたドライバーを落とし、
サンジの方を見る。

サンジは気にしない感じに、
手を止めず、ただ黙々と夕飯の仕込みをしている。


「サンジ、もう一度言うけど、
俺が女だったらだぞ?
絶世の美女でも巨乳でも可愛いわけでもないんだぞ?
俺のまんまが女になってるだけなんだぞ?」


ともう一度聞いてみるが、サンジは、
手を止めず、
とんとんと軽やかな包丁の音をたて続ける。


「たらこ唇のもじゃもじゃ毛の変な嘘を付く女なんだぞ?
それでも付き合うのか?」


と聞く。
サンジはそれでも手を止めず、
とんとんと軽やかな音をたてながら、
何度も聞くなと言いたげなため息と共に、


「付き合うつってんだろ?」


と言う。


「ごめん」


別に謝る必要はなかったのだが、
不機嫌な声だったため、謝ってしまった。


「じゃ、ウソップに聞くが、俺が女なら付き合うか?」


サンジの手は止まらない。
ウソップは落としたドライバーに手を伸ばし、
さっきまでいじっていたものをまたいじりはじめる。
また、しばらくとんとんとカチャカチャの音が流れた。
どれくらい経ったかわからないが、
さっきまでとんとんとたてていた包丁の音はなくなり、
いまは何かを刷る音がする。
そして、ウソップはひと際大きい音を立てると、


「付き合わねぇ」


とぼそぼそと言う。
サンジの手がとまり、
ウソップの方を振り向くが、
すぐに戻り、また刷り始める。
ウソップもトントンと調子のいい音を出す。
その音に紛らわすかのように、


「今のサンジが好きなんだ」


と小さい声で言う。
しかし、ちょうど音と音の間に発言されていたため、
サンジの耳には届いていた。
サンジは刷っていたものを置き、
なるべく音を立てないようにウソップに近づきながら、


「俺も今のウソップがいいよ」


と言い、後ろから羽交い締めをする。
突然の重みにウソップは驚き、
バランスを崩し、
持っていた鉄のかたまりにおでこをぶつける。
ウソップはおでこを押さえながら、
大げさに「痛い」と言った。
それを見たサンジは、愛おしそうにウソップを見てから、
勢いよく後頭部に頭突きをした。


「痛ってーーーーー」

「もう一発食らえ!」


とさらに頭突きをする。


「痛いって!!」

「年上をからかうからだよ、ばーか」


と言うと、羽交い締めしていた腕を首もとに持っていき、
ウソップの首を絞める。
ウソップはすぐさま、
サンジの腕をたたきながら、


「ギブギブ」


と言う。
サンジはさらに、


「まだ、甘い!」


といいながら首を絞める力を強める。
そして、ウソップは涙目になり、
サンジの手を本気でたたき始め、


「マジで苦しい!!」


と悲痛を訴える。
それに満足したのか、サンジは絞めた腕をゆるめ、


「お兄さんをからかった罰だ」


とニヤと笑って、
戻っていく。
ウソップは涙目を拭きながら、


「からかったわけじゃねーし」


とつぶやいた。





Fin.

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