クリームソーダ

□04
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アイツは今でも俺のことを、幼馴染としか思ってへんらしい。




「何や財前、今日調子ええんやないか?」

「いつも通りッスわ」




謙也さんがニマニマしながら俺に近づいてきた。キショイ。

海音が俺の彼女になって数日。
特に何も行動してへんのは様子見しとるからで。




"光、寝れへんからお話しながら寝よ〜"

"光、その飲み物ちょうだーい"




幼馴染いうても、すでにそこらのカップルよりカップルらしいことしとるからな…。
変化するにもそう大きな違いはない。

というか、アイツ絶対彼女の意味わかっとらん。

それにむしゃくしゃする。




「っち、」

「舌打ち!?」




やっとの思いで伝えたはずが、伝わってへんかったとは…。
いや、これは俺が海音に恋愛経験を積ませなかったせいでもあるのか。

そもそもアイツは俺を男として見てへん。それが問題や。

あぁ、もう……。




「ったぁ!?おまっ、この至近距離でボール打つか!?アホなんか!?」

「謙也さんのアホ面」

「俺お前になんかしたかなぁ!?」




過保護すぎたんかなぁ…。

いや、他の奴らにを渡すわけにもいかへんかったし正当防衛や。俺のしたことは間違ってへん。


しっかし、どうしたもんか。

海音に彼女としての自覚を持たせるには何をすべきなんや。
アイツ鈍感やから手ぇ繋いだりキスするぐらいじゃたぶん無理や。事故として流されかねない。

そりゃ、ヤるのが一番手っ取り早いし俺だってシたいっちゃシたいが。
海音のことを考えたら出来ひん。大切にしてやりたい。






「ウォンバイ財前!!」






はぁ……憂さ晴らしにテニスに打ち込むとは。
俺もまだまだ思考回路がガキっちゅーか…。

Tシャツの袖を捲し立て、汗を拭く。

女子が騒いだ。
人の腹を勝手に見てんなや。見せもんやないねん。


海音がいるはずの教室にチラリと目線を向けた。
窓際からがこっちを見とる。

……待ってる間、暇なんやろか。
勉強しとればええのに、あのアホは。


目線が、あった。






「――…、」






何か、俺ばっか好きみたいでムカつく。

そう思いつつ頬が緩む。

何やろ、アイツみると怒ってたこととかどーでもよくなる。
海音のアホ見ると小さいことに思えるわ。

小さいことごちゃごちゃ考えんと、少しずつ自覚してもらってけばええか。




「…ま、ええ傾向やろな」




あぁいう顔するようになるとは。

目があって顔真っ赤にするて……意識はあるんか。
なしてそれで自覚ないねん。溜め息が出た。




「さっき財前の幼馴染みちゃんが教室おったで!」

「俺らの方見とったけど財前に用なんちゃうん?」




何度か軽く打ち合いを終えたらしい、部長らがこっちに来た。
なんや先輩らも気付いとったんか。




「ちゃいますよ」

「じゃあ俺らの誰かに見惚れてたとか?」

「俺のエクスタシーなプレイにやろ」

「部長、その言い方誤解招きかねないッスわ」




何で王子みたいな甘い顔面持っとるのにどこか残念なんやろう。不思議でならん。
イケメンやから違和感のないポーズをとるが、ただの変態なだけ。
部長のどこがかっこええのか理解に苦しむ。


もう一度教室を見た。
海音の姿はもうそこにはない。
勉強始めたんやろか。

……はよ、部活終わらせよう。






「―――…はぁ…」






目の前で眠りこけている。
勉強しとった形跡ゼロ。

コイツ待ってる間ずっと寝とったんか。
何の警戒心もなく規則正しく眠っとる。




「……寝込み、襲ったろか」




耳元で言っても反応なし。
ただ身を捩るだけ。
昔から一度眠りにつくとなかなか起きなかったが、今でもそうなんや。



起きないことをええことに、ゆっくりと顔を近づける。

そして――…。






「――いったぁい!!え?え?」

「いつまで寝てるんやこのドアホ」

「え、あ、光?…うっそ、もうこんな時間!!」






ピンッ!と額にでこピンをすれば飛び起きた。
いい音したから結構痛かったはず。

慌てて変える用意を始めた海音を机に寄りかかりながら待つ。


――…何しようとしてんねん、俺。




「光、終わったよ〜帰ろう!」

「……。」

「ひ、光?お、おおお怒ってる?」

「…待たせてたの俺やのに怒るわけないやろ」

「そ、そっかぁ…」




ずっとずっと、好きやったから。
いつものこと女として見とったから。

やから――…いざ、触れられる関係になったかと思うと。


簡単に理性切れそうで、あかんわ。
気ぃつけよう。





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