クリームソーダ

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「あっついよ〜…」






少し部屋の外へ出ただけでこれや。
今年の夏もものすごく暑いらしい。

クーラーをつけてベッドの上でゴロゴロと転がる。


もうすぐ楽しみにしとる夏休みなわけやけど。

所属しとる部活も盛んな方やないし、お友達と遊ぶ予定があるわけでもないし。
宿題早く終わらせて、ぐうたら生活かな。干からびそうな気がする。






「うっわ、さっぶ…」

「ひ、光!!」






カラカラと窓が開き、カーテンが翻ったと思ったらそこには幼なじみの財前光が立っていた。
か、勝手に入ってこんといてよ!あほ!

光はクーラーの温度を下げ、ベッドに腰掛けた。




「な、何でいつも不法侵入なのかな。普通に玄関から来ればええのに…」

「何で遠回りせなアカンねん」

「近いとかそういう問題とちゃうと「は?」何でもないですごめんなさい」




昔からなぜか、私は光に頭が上がらん。
光はこう、有無を言わせない威圧感があるというか…うん。
とりあえず、私より強い。




「ほれ、やるわ」

「え……あっ!新作やん!」

「好きそうやったから買ってきた」

「わぁっ!おおきに光〜」




コンビニの袋に入っていたのは新作のアイス。私の好きな白桃の。
光はゴリゴリ君を食べていた。相変わらず好きなんやな。

私にもわざわざ買ってきてくれたんや…高かったんちゃうかな。




「お金後でええ?」

「あ?いらんわ」

「え、だめだめ。返すよ」

「俺がやる言うてんやから大人しくもらっとけ」

「でも「黙れ」はい」




パッケージからして高い…。
だけど光はああ言うてるし、甘えちゃおう。

ありがとうって言ったが、特に返答はなかった。

申し訳ないな。いつもいつも食べ物おごってもらってばっかりで。
……思えばお菓子ばっかり、奢ってもらってるな。






「光さ、いつも私に食べ物くれるやん?」

「どうした急に」

「もしかして……私のこと太らせたいん?」






………。


沈黙がしばらく続いた。

私たちの目線は交わったまま数秒。
光がため息をもらしながら顔を逸らした。
そのため息……あ、呆れとる?




「アホや。まさかここまでやったとわ…俺は海音のことを見くびっとったらしいな、すまん」

「なんかようわからんけど馬鹿にしとるのはわかった」




まぁ一理ある、と言ったがそれが本当の理由ではなさそう。

なら一体、何だろう。
私は首を傾げるばかりやった。




「そういや、おまえ今年どないするん。なんか予定でもあんのか」

「や、特にまだ何も…友達もみんな彼氏おるし、まったり過ごそうかなって」




そう返せばまたため息。
だから、何でため息つくん。
私なんも変なこと言うてへんのに。




「やから太るんや」

「やっぱ思ってるんやん!うぅ…やっぱダイエットせなあかんかな…」

「あ?する必要ないやろ」

「つ、摘まむのはやめてや!あほ!光はデリカシーがないねん!」

「皮やん」




ど、どこをどう見てこの肉を皮やと…!?

私の腹を摘まんだデリカシーのない幼馴染を睨んだ。
だが、見つめるなと言われただけで何の効果もなかった。睨んでると解釈してくれない辺り私の睨みはまだまだなんやと思い知らされた。



光はいつも私の隣にいてくれる。

小学校の時にちょっと悪口言われてた時も、クラスの男子にちょっかい出された時も、いつも味方や。
光はいつでも私のヒーローやねん。






「うっわ、何でニヤけてんねん」

「光はいつも私に優しいなぁ思って」

「は?何や急に気色悪い」






……毒舌なところも、照れ隠しやと、思う。
少々私にはキツい言葉もたまにあるけど。




「話戻すけど、寂しいとか思わんのか」




夏休みのことだろうか。

光は最後の一口を食べ、ゴミをゴミ箱に投げた。入った。
私も投げた。大きくそれた。鼻で笑われた。






「何で寂しいの?」

「何でって…」

「やって、光がおるやん。光おるなら彼氏もいらんやろ?」






その一言が、始まりだった。






「……へぇ」




嬉しそうな顔をした光は、

大層愉快そうに口元をゆるめて。






「ほな、俺と付き合うか」






幼なじみが、男の子になった瞬間やった。






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