クリームソーダ

□08
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「で、何」




それで何、と言われると、何か黙ってまう。

言いたいことはたくさんあるんやけど、上手く纏められへん。
そんなこというたら光に馬鹿にされるから言わんけど。

光は少しイライラしとるらしく早くしろ、と目で訴えていた。




「何で最近、避けるん?」




一番聞きたかったことを、聞いてみた。

光はピクリと眉を動かして、すごい一瞬やけど、悲しそうに目を伏せた。
やけど気付けばいつもだ通りの光で。






「もう終いや」

「え?」

「付き合うとかなし言うてんねん」






つまり、なかったことにするっちゅーこと…?

唖然と光を見ると、腕を組んで私を見下すように見ていた。




「海音、謙也さん好きなんやろ」

「そ、そら、憧れとるよ。かっこええもん」

「なら、謙也さんと付き合えばええ」





っはあ!!?
何でそうなんねん、付き合っとるの光やん!!


確かに前々から光に謙也さんのファンっちゅーことは言っていた。

けど、好きとちゃうねん。
いや、好きなんやけど憧れの好きで、光の好きとは違う。


光は溜め息をついて、椅子から降りた。
私の目の前にしゃがみ、頭に手を乗せる。






「強制的に付き合わせたようなもんやし、気にすんなや」

「……」

「いつもみたいに、ちょっとした遊びやったって思っとればそれでええ」






――…本当に、本気でそう言ってるん?


やったら、悲しい。

やって私やっと光のこと好きやって、気付いたのに。光に気付かされたのに。こんなの酷い。酷いわ。
なら、ずっと幼馴染がよかった。気付かなきゃよかった。

光の手が、私の頭からゆっくりと離れようとする。




「何や、まだなんかあるんか」

「…嫌や」

「…はぁ?」




光の腕を掴んで、私は俯きながらポツリとつぶやいた。

光の眉間に皺が寄っているのがわかる。たぶん。




"俺は、ずっと女として見て来たんや。幼馴染で、近くにいたとしても"

"昔のままやない。ただの幼馴染みやないねんで、俺ら"




そう言ってくれたのは、光やん。
もう、普通の幼馴染みになんて戻れへんよ。




「強制やない」

「何言うてんねん、お前」

「私はっ、……光が好き」




光の手が、肩に乗った。
顔をゆっくりあげれば、光は真っ直ぐに私のことを見ていた。

黙って、私の目を真っ直ぐに。

恥ずかしさからか、何でかわからんけど涙が溢れる。




「本気で言うてんのか」

「ほんまや」

「謙也さんは」

「やから憧れ――」




口と口が、重なる。


あぁ、やっぱり光のこと好きやなぁ。
普段はあんなに無愛想で、冷たくて、最悪やのに。
何でキスは、こんなに温かくて優しくて、やわらかいんやろう。

ねぇ、光。
私きっと、ずっとずっと光のこと好きやったから。
だからこの気持ちが恋愛の『好き』やって、気付けへんかったのかも。




「嘘とか、なしやで」

「言わへんよ。私が好きなのは光やもん」

「――よかった、」




私のことを強く強く、抱きしめた。
私も光の背中に腕を回す。

夏やからかな。めっちゃ体熱い。
あ、でもクーラー効いてるんやった。




「じゃあ、記念っちゅーことで」

「、え」




ひょいっと持ち上げられた。
急に浮遊感が私を襲う。

反射的に光の首に腕を巻きつかせれば苦しいと言わんばかりに眉を寄せた。
いや、今の私悪くない。






「さて、と」






ベットの上に静かに降ろされる。
私は不安げに光を見つめた。

まさか…いや、まさかね…。
光の目はギラギラしていて、何か今から獲物狙うみたいな目ぇしてて。

私の上に跨り、ニヤリと嫌な笑みを浮かべている。
なのにかっこよく見えてしまうって、重症なんかな。うーん。






「な、何するん?」

「ん?ナニするんやで」

「へ?」






わけわからん。


素っ頓狂な声を出した私に対して愉快そうに笑い。

私にキスの雨を降らせた。






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