クリームソーダ

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「なんなん、本当にもう…」






携帯を握りしめながら、私は呟いた。

光からの連絡は一切なし、私の電話にも出ん。
部活忙しいのもわかるし、疲れとるんやろうけど…でも…。




「酷いわ、ほんま」




夏休みは一緒にいてくれるって、言ったのに。
光がいるから、友達と約束せんでも平気やって。

せやのに、結局私は1人で。


アイスを食べようと、お財布片手に部屋を出た。






「「――…あ、」」

「おー!財前の幼馴染みちゃん!」

「こ、こんにちは…!」






まさか謙也先輩と鉢合わせるとは…!
謙也先輩もアイスが食べたいのか、アイスボックスの前に立って真剣に悩んどった。

不意に顔を上げて目線があった時にお互い驚いて、今に至る。




「アイス買いに来たん?」

「謙也先輩もですか?」

「せやで〜ほんまあっつくてしゃあないわ」




今日も笑顔でとても素敵です、先輩。
笑顔につられて、私も笑顔になった。

でも、その後急に眉をハの字にしてしょんぼりとした表情になる。






「すまんなぁ、海音ちゃん。財前とケンカしてへん?」

「ケンカは…してないですけど、」






会っても話しても、ないです。と言葉を続けた。

例年通りやったら、アイスに買いに行く時とか一緒に買いに行ってたし。
今隣にいるのが普通やってんけど。

何故かケンカっぽくなってしまっとる私たちは近くにいない。




「付き合っとるって知らんでな。すぐにあの時財前呼ぶべきやったわ」

「えっ!?」




何で知っとるんや、この人!!
光が言うたんかな…こういうこと言わんと思っとったんやけど…。

謙也先輩は光の名前を出すと弟のことを話すような感じでイキイキと話し始めた。




「海音ちゃんと付き合ったって言った時の顔、ほんま嬉しそうでな〜ずっと好きやったんやなぁ」

「え、」

「これいうのもおかしな話やけど、海音ちゃんって俺のこと憧れ?てくれとるんやろ?白石から聞いたんやけどさ」




何故知ってる。
てかそれ本人に話しますか普通。


何て答えればいいのかわからなくて、とりあえずめっちゃ恥ずかしかったけど首を縦に振った。
謙也先輩も照れながらお礼を言って。

何なんや一体この状況は。






「財前がなぁ、やっぱ俺のこと紹介してやればよかったとか言っててん」

「え、そうなんですか?」

「ほら、この間話しとったやん俺ら。海音ちゃんが嬉しそうに見えたみたいでな、無理やり付き合わせたからーとかなんとか言うてたで」






―――…何やねん、それ。


いっつもそうや。
大事なこと私に言わんで、1人で勝手に決め付けて。

私は嫌や。光と一緒におりたい。
謙也先輩は確かに憧れで、こういう人と付き合いたいって何度も何度も光には言っていた。
だけど憧れやねん。


私が好きなのは――…光やって、わかってへんかったのかな。
やから、付き合えって言うてくれたんやと思っとったのに。



「最近元気なかったからケンカしたんかなぁって」

「…ありがとうございます」

「俺が言ったってのは内緒にしてな。怒られてまう」




悪戯っ子のように笑った謙也先輩。
アイスを買わずに、私はコンビニから出た。

走って走って、家に戻る。


玄関を開けて、
部屋のドアを開けて、
窓を開けて、

光の部屋の窓に筆箱を投げた。






「何やおま――…ちょ、やめろ。お前は飛び移れん」

「嫌や、光の部屋行く!」

「何急に子供みたいに駄々捏ねてんねん。無理や言うとるやろ、やめとけあほ」






確かに跳び移れる自信はない。
いつも光は飛び移って私の部屋来てくれとるけど。
今は私と話したくないかもしれへんけど。

でも、私は。






「光と話したい…」

「…そっち行くから、待ってろ」






私は窓から離れて、ベッドの上で座って待機。

それから数分。

いつものように飄々と光は私の部屋に入ってきた。






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