短文

□万年筆
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広々とした執務室に大体の荷物、といってもライトや発火布の予備やペンぐらいしかない少ない荷物を片付け、一段落がついた。
ため息をついて、私用の椅子に座り外を見上げた。
どこまでも続く空。
終わることのない空。
途切れない空。
人はみな、変わっていく。
それはしょうがない。
だが、私の記憶からあいつが、あいつの記憶から私がいなくなっていくのは寂しいを通り越し悲しい。
いや、悲しいとも少し違う感情だ。
胸が痛くて、締め付けられるような気がする。
そんな事を考えながら、多少居眠りをし出した頃だった。
いきなり勢いよく、執務室のドアが開いた。
慌てて飛び起き、振り向いた視界の先にはマースがいた。

「よ!」

片手をあげて、ニコッと笑う。
それに応えるように微笑む。
遠くても、近くてもこれが私達の合図だ。
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