BLEACH 死神篇(仮)
□第2話 Progress
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「おはようございます椿様。」
チチチッと鳥が囀り、冷たい風が吹き抜ける。
「……寒い。」
目を擦り擦り、布団から少女が身を起こした。
侍女は苦笑して、今開けたばかりの障子をぴしゃりと閉めた。
「いよいよでございますね。」
「うん。」
言葉少なにそう返すと、少女はよっこらせ、と起き上がった。
「お母上様も、さぞやお喜びのことでしょう。」
そう言うと、侍女は少女の髪を漉き始める。くせのない黒髪が、肩から腰にむかってさらりと流れていた。侍女の手の動きに合わせるように、なめらかに波打つ髪を見て、彼女はため息をつく。
「小袖様にようく似て……」
「蓉蘭。」
たしなめるように椿は侍女の手をやんわり押さえた。
「はっ………申し訳ありません椿様。」
目尻に浮かんだ涙を拭って、蓉蘭は微笑んだ。
しゅるしゅると衣擦れの音を響かせて、桐生院椿は渡り廊下を歩いていた。入隊の儀に滞りのないよう、今日は瀞霊廷のそここそで慌ただしく死神たちが動き回っている。
桐生院家とて例外ではない。
最近、見慣れない顔のものたちが頻繁に出入りしていた。
そのせいか、もとからの使用人たちはそわそわしてどうも落ち着きがなかったし、椿も何となく居心地が悪かった。
「入隊して……席官に…」
「五席か六席…」
「平……隊長の」
切れ切れに聞こえる会話から、だいたい何を話しているのかは見当がついた。
まさかと思ったが、自分にはどうやら破格の待遇が待っているらしい。
…正直、どうでもよかった。
物心ついたときから回りを護衛していたのは、刑軍。
その装束を見慣れたせいか、死神を身近に思っていた。
挨拶にくるのは上位席官ばかり。それが当たり前だと思っていた。
席次を持つ、それが当たり前だと……