BLEACH 死神篇(仮)
□第2話 Progress
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「椿、参りました。」
障子越しに声を掛けると、影が僅かに動いた。
「入れ。」
一つ深呼吸して、椿は障子を引き開けた。
薄暗い部屋の奥の仏壇の前に、一人の男が座っていた。
一歩入ると、男の膝に纏わりついていた猿が、毛を逆立てて威嚇するように椿に牙を向く。
いつものことだが、椿はこの猿が大嫌いだった。
そして今日はいつにも増して憎たらしく思えて、蹴りつけたいのを必死に堪えて男の後ろに正座をした。
しばらく睨みあっていたが、ついに猿のほうが根負けして、ふいっと目を逸らした。
してやったりとほくそ笑み、椿はぺろりと舌を出してにやっと笑った。
「雑念を持ち込むな。」
突然、男が声を上げた。おいで、と呼ぶと、猿はするする男の肩に這いのぼる。愛しそうにその頭を撫でながら、男はため息をついた。
「無事にこの日を迎えられましたこと、ひとえに父上のお………」
沈黙に耐えかねて挨拶の口上を述べはじめた椿を遮るように、猿はキーッと耳障りな鳴き声を上げた。
「……父上のお陰にございます。心より感謝申し上げます。」
「桐生院の名を汚さぬよう、務めに励むように。」
心の中で鎌首をもたげる怒りを必死に堪えながら、椿は深々と頭を下げた。
「家名に恥じぬ働きを致しますことこそ、我が務めと心得ております。」
「……行け。」
ドタァン!!
仏間を出た途端、数人の娘と真っ向から衝突した。
派手な音を立てて、彼女たちが抱えていた櫃が転がる。
聞き耳を立てていたらしい侍女たちに向かってため息を吐くと、椿は櫃を拾うように促し、あたふたとする彼女らの袖を引いて、隣の部屋にひき入れた。
「も……申し訳ございません!!!」
「いや、別に構わないから。」
平謝りに謝る娘たちは、いくら宥めても顔を上げようとしない。
椿はため息をついた。