BLEACH 死神篇(仮)

□第1話 The beautiful white encounter
2ページ/6ページ




「あたしは、何のために死神になったんでしょう…。」


憂いを含んだ声が、湿った空気に吸い込まれる。


「それは、あなたにしか分からないことなんじゃないでしょうか。」


一言一言が、重く沈み込みように少女の耳に触れる。



「はい…。」





そう思いつめることはないですよ、と、柔らかく微笑んだ鳶色の瞳が告げた。


俯いた少女の、ゆっくり伏せた漆黒の目の端には、うっすらと涙が浮かんでいた。


「それに…」


思い出したように青年は明るい口調で言った。


「僕だってそんなことをいつも意識しているわけじゃない。僕だけじゃないです。みんなに聞いてごらんなさい。なんなら総隊長にでも。」


おどけてみせた青年を見て、青白い顔をした少女は頬を少しだけ緩めた。



「はい。」





ひらり、ひらりと、雪がまるで桜の花弁のように舞い落ちる。
あたりは一面雪に覆われ、枯れ草も、剥き出しの地面も、何もかも白く美しかった。


そしてそれらは、冬の弱々しい日光を反射して、限りなく美しく煌めきを放っている。


だが、二人の立っている場所だけは色が違った。


そこここに点々と散る濃い赤色は、直径数センチほどの円形にその色を広げている。


外側にいくにつれ、淡く薄くなっていく赤い斑点は、さながら牡丹の花のようだった。



「あなたひとりが責めを負うことはありません。現実を受け止めることは大切です。しかし、」


彼は言葉をきると、足元の雪を片手で掬いあげた。
すると雪は、大地を離れた途端に輝きを失い、ひどく硬質の無機質な塊になったように見えた。


柔らかな輝きの失せたそれを、彼は少しの間見つめると、ゆっくり少女の方に向き直った。





次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ