お貴族様
□Verbrachte mit der〜貴方と過ごした日々
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]月1日
「あなたのことは、今日から私が支配します。いいですね」
反抗は許さない認めない。そんな空気で言い放たれました。メガネが光っていて、怖くなりました。その奥に見える瞳は、まるで宝石みたいです。確か、アメジストという名前でした。綺麗な紫色です。彼はローデリヒ・エーデルシュタイン。まさしく「宝石」を名前に戴く人です。
「は、初めまして……ローデリヒ、さん……」
初めて会ったローデリヒさんに、フェリシアーノは挨拶しました。
「何か質問はありますか?」
「……えっと……お食事に、パスタは出ますか?」
大好物が食べられるかどうかは、フェリシアーノにとって大事な問題です。どこに行こうと、どんな暮らしをしようと、欠かすわけにはいきません。
「出ません」
何を言い出すかと思えば、まったく……ローデリヒさんは、ぶつぶつ文句を言っているようです。
「黙って座っていれば世話をしてもらえるなどと思っているのではないでしょうね。あなたは今日から私の家で下働きをするんですよ、わきまえなさい」
「あの……下働きって、何をするんですか?」
フェリシアーノがおずおず尋ねます。これまでお坊ちゃん育ちだったのですから、わからないのも道理です。
「仕方ありませんね。これから教えましょう。一度で覚えるのですよ」
ローデリヒさんは、ちょっと苦々しい顔をしてから、言いました。
「明日からみっちり仕込んであげます。今日は移動してきたばかりですから、自分の部屋を片付けたらお休みなさい」
「はぃ……」
その時のフェリシアーノは、気づかいとか労りとかいう言葉を知りませんでしたから、ローデリヒさんのホクロのある口元がわずかに笑みの形になっていた意味も、わかりませんでした。
エリザベータと名乗るお姉さんが案内とベッドの用意をしてくれたので、そのまま眠ることにしました。
ローマじいちゃんもロヴィーノ兄ちゃんもいない異国の夜はとても寒くて、フェリシアーノはなかなか寝付けませんでした。
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