パラレル〜現役の「彼」がグレルの上司だったら〜
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「地上は、たまに美しいんだ。だから、たまには見甲斐のあるレコードの持ち主もいる」
「………」
「何なら、俺のレコードを見せてやろうか?」
足下に散らばる街の灯り。見上げた空には弱々しい星の光。それらとは比較にならない存在感でまっすぐ覗き込んでくる、吸い込まれそうなペリドット・グリーンの瞳。
「―――んっ……」
おもむろに合わせられた唇は、柔らかで、温かで、甘かった。
(こんなキスが、出来るくせに……)
溶け出しかけた思考で、ぼんやりと考える。
この男のシネマティック・レコードは、自分のものとは比較にならない厚さがあるのだろう。興味がないと言えば嘘になる。だが、恐ろしいと思ってしまうのも、正直な気持ちだ。
(アタシ、飲み込まれちゃいそうだワ……)
次の瞬間、唐突にグレルのぼんやりした感慨はかき消された。
「――ちょっとォ!調子に乗って、ドコ触ってんのッ!」
イヤらしく撫でてきた左腕をねじ上げる。
「…いつものお前らしい反応だな」
からかうように言われて、二の句が継げなくなる。
「な、な…何……っ」
とっさのことなので本気だったはずの利き腕を、易々と外される。
「その元気でどんどん働いてくれよ、グレル」
初めて名前で呼ばれたグレルが、そのまましばらく固まっていると、
「とっとと戻るぞ」
と硬質な声が飛んできた。
続く
「先日の出来事」って、何ですかぁあ!!
次回、その全容が明かされる……かも?
20111122