パラレル〜現役の「彼」がグレルの上司だったら〜

□P
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「納得……して下さいましたか?」

ああ、だけど執事なぞしたことがないから……離すタイミングが分からないんだろう。満足には程遠いが、これはこれでよしとしよう。

「いいだろう。じゃあ、上司として仕事で成果を上げた若者に」

同じように手に口づけてやる。さっき手袋を外していたから、すべすべした白磁の肌に、唇を当てる。

「足りないか?」

あくまで上司として、ひざまずくのは省略したから不服がるかと思ったが。グレルは、熱のこもった瞳で俺の唇をまじまじと見ている。

――――そんなつもりじゃなかった、とは言わせないぞ。

少々荒っぽく唇を奪って、歯列を舌でこじ開ける。

「……!」

いきなりのことに驚いて硬直する筋肉の、わずかな隙をついてやれば、それほど難しいことじゃない。こうして口づけるのも、もう何度目かになるから、抵抗をかわす術くらいは分かっている。

ああ……いつもより幾分熱いな。口内の熱さが、俺の舌にまで伝わってくる。しばらく続けていたら、溶け出しそうだ、なんて柄にもなく妄想するほどに。

「んん……ッ!!」

抗議の声を上げようとするので、いっそう深く舌を絡ませてやる。息苦しいのかもしれないが、そう簡単に息の根が止まることはない。

ひとしきり口内を貪ってから放してやると、グレルは前屈みになって肩で息をする。

「は……はぁ……っ」

いいさ。今日の特別な記憶とともに、刻みつけておけ。

人間の通り道だし、屋外だし、これくらいがせいぜいだ。

「い、今の、は……」

まだ少し震える声で問いかけようとしてくるが、多分きちんとした言葉にはできるまい。

「レコード一つに、いつまでも昂奮しているんじゃない。戻るぞ」

特別な体験は体験として、仕事の上では頭を切り替えることも必要だ。

「は、い……」

「することはいくらでもある。ざっと報告書を書いたら、資料室を整理するから、手伝え」

「了解、です……」

「俺の資料室には、数百年間の魂の記録があってな。目ぼしいものをまとめておきたいんだ」

途端に、惚けて蕩けていたグレルの瞳が活力に満ちて見開かれる。

「わかりました! やりますDEATH!!」

それが、これ以上ない誘い文句になった。

今は、仕事がらみの更なる刺激を欲しているところだ。だが、覚えておけよ。お前の仕事は、俺と関わることで成り立っているんだ。


(続く?)


〈後書き〉

今回は、ちょっとわかりづらい描写が連発している仕様です。

このシリーズは、オフィスラヴです。お仕事ものです。しかし、どう書いても、数々の人間の最期の様なんて「嘘」にしかならないので、思い切ってココまで感覚的な書き方にしてみた次第です。

グレルくんは、自己完結型M体質なので、自分の世界にイッちゃったら、誰にもその全容はわからないと思います。


この後は・・・

資料室! 2人っきり!! 
新米グレルくんの運命や、いかに?!
現役テイカーの鬼畜っぷり爆発、か?!(誇張)


20171022
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