☆オリジナル小説ブック☆

□ノンリセット
1ページ/8ページ

「やっぱりここにいたんだね」
夕日に照らし出される公園、その入り口に少年は荒い息を整えながら少女にそういった。
少女は水色のワンピースに身を包みブランコに座ってうつむいていた。
少年は少女に歩み寄り少女の前で屈みこんで少女の顔を見上げた。
すると少年の頬に一粒、また一粒と夕日に朱色を付けられた涙が落ちては流れていった。
「え、ど、どうしたの、なんでないてるの?」
少年が心配そうに少女に泣いている理由を聞くと少女はしゃくりあがりながらも口を開いた。



春の暖かな陽気の下、上村辰哉は高校生活二年目となる始業式を迎えていた。
「――なので皆さん今年から新学年となり、気持も浮いていることと思いますが、あまり校風を乱さないように……」
体育館の舞台上では生徒会長である羽沢棗がてきぱきと話をこなしておりその横では一歩下がって副会長である前川水が
静かにたたずんでいた。
「ふぁー、ねむ……」
いつもそこまで長くなく簡潔な棗の話が始まってから三分、後半に差し掛かったあたりで辰哉は大きなあくびを一つ漏らした。
この新宮高等部は中学からのエレベーター方式であり生徒会長は中高一括で一人のみななのだが棗は中学生の頃からそのカリスマ性で生徒会長を務めていた、そして棗の話はなぜか辰哉を夢の世界へ、たとえそれが短い内容であっても誘ってしまう効力があった。
「――っそこ!二年A組み上村辰哉、わたくしの話を最後までお聞きなさい!」
棗はそんな辰哉の小さな行動も見逃さずに辰哉があくびをしたと同時に辰哉をにらみつけ罵声を発した。
「あらあら、おちついてください、会長」
そんな棗の横で棗のことを目を細め、ニコニコしながら水は棗をなだめていた。
辰哉にとってみればこれは何気ないいつものやり取りに過ぎなかった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ