ギャグ漫画日和

□好きだ
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好きだ
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「妹子が好き…嫌い…好き…」

何度も何度も同じことを繰り返している。咲
き誇る野花に手を伸ばして座り込んで花弁を
一枚一枚取り除いて行く。同じ言葉を繰り返
し繰り返し、何度やっても同じ…"好き"とい
う言葉で終わる。

「妹子のことが好きなのかな…」

もう一度やる、もしも"好き"で終わったなら
もう一度何度でもやってやる。だって認めた
くない。わたしが妹子のことを見ていると心
臓がいつになく高鳴ること、触れたいって思
う事……認めたくない。これが恋愛感情だっ
て認めたくない。

「嫌い…好き…嫌い…っ好き!」

大声を上げて野原に倒れる。晴天の空がます
ますわたしの今の姿を惨めに思わせる。だっ
て妹子は…いつも大人みたいなこと言って、
わたしのことを馬鹿にして…それで…。"好
き"なんて言ったら、どんな顔をするのかな。

「妹子なんか…」
「僕がなんですか?」
「は?……わぁ!!」

頭上から聞こえてきた妹子の声に心臓が飛び
跳ねるほど驚いた。青い空を背景に妹子の顔
が見える。短い髪は微かな風に揺れていて、
どこか惹かれた。

「こんなとこで何してるんです?」
「別に…」

冷たくあしらうと妹子は溜息を吐いた。いつ
もこんな感じ、素直になりたくてもなれない
わたし。きっと呆れられてる、分かっていて
も直らないのはしょうがない。不意にわたし
の周りに散らばる花弁を妹子は拾って呟いた


「花占いでもしてたんですか?」

その言葉にも驚いた。「そ、そんなこと…」
とついつい口が引きつり言葉を噛んでしまっ
た。妹子を見るとあの苛立たしいニヤニヤと
した顔がわたしを見ていた。

「なにその顔!!」
「図星だと思いまして」
「違うから!」
「太子が言ってましたよ」
「え…」
「名前が最近ここで花占いをしてるっ
て…」

手に持っていた花弁を妹子は風の流れに任せ
る様に空へと投げるとわたしへと視線を向け
た。小さい頃から見ていた妹子の顔、こんな
にも変わったんだと今一度思った。手に伝わ
って来た体温に咄嗟に妹子を見つめた。

「花占いなんて…馬鹿げてる」

その言葉の後に続いた口づけに瞼を閉じた。
初めての口づけにわたしは妹子の手を握った
。それに答えるように妹子の手も握り返して
くる。やっぱり認めます、もう分かったから



あなたのことが好きだってこと


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