ギャグ漫画日和

□期待しても
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期待しても
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着物をはおり縁側へと出ると静かに眠る彼の
姿。バカな聖徳太子、青い服を身にまといい
つもは見える筈の額は降ろされた前髪で見え
ない。

「珍しいな…」

新鮮な彼の姿にわたしは静かに近寄ると彼の
横へと座った。かすかに聞こえる呼吸に何故
だか無性に愛しさを感じて頬へと指を触れさ
せた。彼に惹かれる理由はよく分からない。
カッコイイわけでもなければ素敵なわけでも
ない。いつも見ていて単なるバカにしか見え
なくて…不思議だった。あんなに笑っていら
れる人が。

「どうした、名前?」いつだか笑いこける
わたしに言った彼。なにが言いたいのか
分からず聞き返せば太子は不思議そうな顔で
言った。

「面白くないか?」

と言ってきた。笑っているのだから面白いだ
ろう。と言い返せば「心から笑っていない」
なんていわれて、フツフツとこみ上げる怒り
に身を任せて怒鳴った。今思えば彼なりにわ
たしに気を使ってくれてたのかもしれない。
毎回わたしを笑わせる為に面白いことばかり
……変な人だけれど、そこが惹かれた理由
なのかもしれない。

「……ん…」
「…あ……」

寝返りを打った太子の体が傾いて…「おまー
!!」なんて悲鳴と痛々しい音が耳を通過した
。要するに縁側から落ちてしまった。

「いつつ…痛いなー、なんだよ!」

起き上がった太子の顔には土が付いており、
なによりわたしを見つけたと思ったら驚いた
様な顔をしている。

「名前?」
「っ……」

何故だか気恥しくなりわたしは顔を逸らして
しまった。土を払う音が聞こえて再度視線を
太子へと向けると変な顔をしながらわたしを
見ていた。

「っふ…ふふ…」

ハッとして口元を手で覆う。ふわりと空気が
揺らいだ気がした。温かい感触が頭部に広が
る、太子の手がわたしの頭を撫でている。見
上げればいつものバカな雰囲気はなくどこか
子供をあやす父親のような感じがしてわたし
は咄嗟に目に溢れた涙を隠した。

「なっ!…何故泣く名前!!」

慌てる太子の声にわたしは必死に涙を堪えよ
うとした。亡くなった父をわたしと母は見捨
てた、そうするしかなくても耐えられなかっ
た。わたしを愛さなかった母よりは好きだっ
た。

「泣くな名前、これを見ろ!!」
「…へ……」

顔をあげると明らかに顔の原型をとどめてい
ないほどのおかしな顔、が目の前にありわた
しは吹き出した。笑えた、心からは分からな
いけど、どこかホントに面白くて…。

「それがいいぞ」
「え……?」
「名前は笑っていた方がいいと言うこと
だ」

ドクンと心臓が高鳴る。太子はきっと本心で
言ってるだけできっと恋愛感情はないのだけ
れど…これでは期待してしまう。

「摂政命令だ、常に笑っていることだぞ」
「太子様…」

ハラリと頬を垂れた涙は途中で彼の指ですく
われた。こんなロマンチックなこともできる
んだと思ったのは内緒にしておこう。まだ分
からないけれど、少しは期待してもいいのか
もしれない。好きと言う感情はまだソッとし
ておく。この気持ちはもう少しまだ先に言う
時がくると思うのだから。

「どこにいくのですか?」
「妹子のとこだ、名前も行くか?」
「行ってもいいのですか?」
「あたりまえだろう!」
「遣隋使様に会うのは初めてですけど…」
「妹子はいい奴だぞ、いや違うなバカか?」
「ふふ」


もう少しだけ期待しても







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