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□泣いて戻ってくるのなら
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・静雄死ネタ
・臨也と静雄は付き合ってる設定





平和島静雄が、死んだ。




その事実を知ったのは二日前。
曲がり角から飛び出してきた子供がトラックに轢かれそうになり、助けようとして、見事トラックに轢かれたらしい。
その時の俺はと言うと、長い仕事が終わって居眠りしているころだった。

彼が死んだというのを聞かされたのは、丁度俺が起きたころだった。
新羅からの電話を何も考えず手に取り、受話器を耳に当てる。
その言葉を聞いたときは、もう、何もかもが真っ白だった。

『――臨也かい?…いいか、今は何も言わずに聞いてほしいんだ。俺だって混乱中だし。
――…静雄が死んだ。』

ぽつり、と。
新羅は小さく言ったはずなのに、俺には耳元で大砲をうたれたような大きさに聞こえた。
――静雄が、…シズちゃんが、死ん、だ?

『トラックに轢かれそうになった子供を寸前で助けたらしくてね。代わりに…――代わりになんて言っちゃまずいか。
…静雄らしい死に方と言えば静雄らしいけどね。…、…君にはね、電話をしないでくれって静雄に言われたんだ。』

俺は固まって、何も言葉を返すことができない。
やっとのこと、俺の口から出てきたのは、なんで、という質問の声だった。

『…俺は、大丈夫だからって。君の仕事がやっと終わったから、ってね。気を…使ったんだろうね…』

その言葉を聞いた途端、俺の次の行動は決まった。
彼のところへ行こう。
新羅に急いでシズちゃんのいる病院を聞き、財布と上着を持ち外へ急ぐ。
この上着は今朝、シズちゃんが綺麗にしてくれたものだ。
この薬指についてるリングは…俺とシズちゃんを繋ぎとめるもの。

タクシーを呼びとめ、病院へと急ぐ。
病院に着くころには、もう太陽が西に傾きかけていた。

病院の待合室で待っていたらしい新羅は、俺に、まだ他の人には教えてないから、と言って去って行った。
――…綺麗な死に顔だったらしい。
頭を強く打っただけで、体には傷らしいものはなかった、と電話で聞いた。
シズちゃんのいる病室に入ろうとした時、そこからでてきた影にシズちゃんかと思ってしまう。
嘘だったのかもしれない。新羅とシズちゃんが俺をからかう為だけに言ったのかもしれない。
しかし、そんな淡い期待を裏切り、出てきたのは医師だった。
医師は俺に気付くと、何も言わず深々と礼をし居なくなった。

病室は静かで、小さな部屋にベットが一つ置いてあるだけだった。
もちろん、そこで寝ている…死んでいるのは、シズちゃんだ。
血の気は、ない。
呼吸音もしない。
肌が冷たい。
なにもかも、俺の知っている死体の感じと一緒だった。
俺の知ってるシズちゃんは、無駄にあったかい子供体温で、俺の顔を見ると暴言を吐いて、変なところで照れるシズちゃんだ。
違う、こんなの、違う。
だけど、これはシズちゃんだった。
彼の左手の薬指には、俺と同じリングが一つ。
ああ、ほんとに…これは、シズちゃんだ。
最後にちゃんと話したのはいつだったか。
1週間も前だったかもしれない。
最後に食べたシズちゃんの料理はなんだったか。
最後にキスをしたのは、いつだったか。

――最後に好きと言ったのは、いつだったか。


「っ…シズ、ちゃんっ…!」


ぽつり、また、ぽつり。
涙は、止めどなく溢れる。


「愛して、る…愛してるよっ…、シズちゃん、…」


彼の左手を握りしめ、静かな病室で叫んでも、彼が起きる気配はなく。
俺は西の太陽が東から出てくるまで、ただ泣き崩れた。



泣いて戻ってくるのなら
俺は、永遠に泣いていよう。






≪プレゼント≫様からお題お借りしました。
私はシズちゃんを殺したいんでしょうか(^ω^)
シズちゃん死ネタ2回目なんすが…←
シズちゃんラヴ!


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