君となら空も飛べる
□未来悟天ちゃんシリーズ
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トランクスがセルを倒して2年あまり--人々からはは人造人間の恐怖も薄れていた。かつて破壊された街のがれきはすべて撤去され、新しい建物が次々に作られていく、次第に元の街並みに近づいていくのを、トランクスは実感していた。平和な時代が訪れたのだ。悟飯を亡くし、たったひとりで人造人間に立ち向かったころには、想像もつかなかった。
(…悟飯さんにも)
(…見せたかったな)
トランクスはCCのロゴが入ったデニムジャケットを羽織り、部屋ばきからブーツに履き替え
自室から降りてくると居間ではブルマがくつろいでいた。
「母さん、ちょっと出かけてきます」
「あら、トランクス、またパトロール?」
「ちょっと地球を見てくるから」
「気をつけるのよ〜」
舞空術で鳥よりも速く飛んでいると、気持ちがいい。もちろん地球に新たな敵が迫っていないか見張るパトロールの意味合いもあったが、これは生真面目なトランクスの数少ない気晴らしともいえた。
自宅のある西の都から大体東の方角に進んでいく。大体地球を半周したところで、トランクスの目にとんでもないものが映った。
(あれは…)
翼竜が山の上を飛んでいる。それだけならともかく(恐竜は珍しいが存在は知っている)その鋭い爪には大きな獲物をぶらさげている。人間だ。意識がないのかぐったりしている。きっと巣に持ちかえって食べるつもりなのだ。
「やめろ!」
翼竜の前に立ちふさがり小さな気弾を放つ。
鼻先すれすれに放ったそれに驚いた翼竜は、獲物を取り落した。
人間が落ちていく。下はかたい地面だ。落ちたらひとたまりもない。
俺は猛スピードで宙に投げ出された人間を地面すれすれで抱きとめた。
次の瞬間首に意識がないはずの少年の腕がしっかりまわされぎゅうっと抱きしめられて驚く。一瞬遅れてほほにかかる柔らかい黒髪がくすぐったい。
ほっと息をつく。
危なかったが、なんとか落とさずに済んだ。
抱きつく少年を少し離して顔を覗き込んで尋ねる。
「怪我はありませんか?」
「…ふえ?」
そして絶句した。
なぜなら、少年の顔が驚いたことに悟飯にそっくりで、なおかつ彼から生えたふわふわの尻尾が所在なさげに揺れているからだった。