花は月に恋をする

□秘密
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平日の昼間だ。
電車は空いていた。
空いてる席を適当に陣取る。

「そういや腹へったなー」
学校は三時間目の前に出てきた。
とっくに昼飯の時間はすぎている。

まあ適当に弁当でも買うて工藤の家でかっこむか。せや、工藤に土産買うてかな。前八橋持ってったらなんで大阪からきて京都みやげだよ、って突っ込まれたな。向こうとこっちじゃ味が違てるけどたこ焼きでも持ってったろ。

新一の呆れ顔と服部と呼ぶ声を思い出して思わず笑顔になった。

『なんでこんなに、惚れてもーたんやろな』

新一のことを考えるだけで、さっきのように自分の狡さにうんざりするし、今のように幸せな気持ちにもなる。

新一がこのことを知ったら一体どう思うのだろうか。

軽く笑い飛ばすのだろうか。
お前ってオレのこと好きすぎるだろ、という姿が見えそうだ。
気色悪いといってドン引きするかもしれない。
それならまだいい例え本心は傷ついていても冗談だと笑って誤魔化せるだろうから。
けれど、もし新一が自分の本気に気付いてしまったら。
その強い眼差しでこの謎を解いてしまったら。

『きっともう一緒にはいられへん』
そばにおるだけで今は十分や。
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